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「もしもし、私です。ユニコです」
投影電話の向こうの主は『よろず捜索本舗』の営業部長兼経理部長でした!
「あ、なーんだ、ユニコさんかー」
急に声色をワントーン落とすミアア。
「『なーんだ』はないですよね?・・・えーと、今日そちらにお客様のメランゲ・パーニ・グラージェナ様が向かったのですが、もう着いてますか?」
「うん。着いているよ?」
「そうですか、それは丁度良かった・・・えーと、遺産捜索と相続の件で仕事を承っていますが、今から亡夫のロブレンテ・メランゲ・パーニ氏の遺言状の複製とグラージェナ様との契約書の複製を送りますので準備してください!」
「オッケーだよ~ん!」
ミアアは受話器をネコみみから外すと、印画紙の遮光膜をめくりあげて、受話器の耳の部分を印画紙の上に持ってきた。
受話器の受話口(耳にあてる側)の中央からエメラルド色の光線が発射され、それが四角形に走査を行っていく。
すぐに印画紙の上に遺言状の文字が現れ、続いて光線がルビー色の間に印画紙を交換して、契約書の複製を描きだした。
「複製できたニャン!」
ミアアが上機嫌で2枚の印画紙をひらひらと振る。
「・・・その契約書に書いてある通り、報酬は遺産総額の100分の3・・・推定遺産は3億ポタ(約6億円)なので900万ポタ(約1800万円)!破格の仕事です!・・・ただし、期限は一か月以内、当面の必要経費は報酬を担保にフラワー銀行から借りたので口座に振り込んでおきます!」
電話の向こうでユニコ営業部長がかなり興奮しているのがわかった・・・無理もない、最近は収支がトントンとなる仕事ばかりだったので・・・
ミアアの電話に代表のラットンも聞き耳を立て発言を忘れ、唾をゴクリと飲み込んだ音が聞こえてくる。
「・・・ただし、遺産が見つかる一か月の間、グラージェナ様たちの生活費は立て替えて、生活場所も一時確保して差し上げることも契約条件の1つなのですが・・・」
ユニコ営業部長の言葉は耳の良いラットンの耳にも届き、彼は「グラージェナ夫人、ちょっと失礼!」
と、『ぴぃ・ヨーーン』とソファから跳ねて、ミアアの受話器をもぎ取った。
「ウにゃあ!!」
爪を立て、やや怒り気味のミアア。あとが怖いかも?
「もしもし、ユニコ部長!僕です、ラットンです。今、言ったことはどういうことなんですか?!」
ラットンは自分には大き過ぎる受話器を両手で持ちながら尋ねた。
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