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アックズは居間のソファに三人の女性が座っており、その対面のソファに鼠人族のラットンが『ちょこん』と座っていることに気が付いた。
「おっと・・・これは失礼。仕事のお客様でしたか・・・もしや?・・・ユニコさんから連絡のあったグラージェナ様ですか?」
と言葉を付け加えた。
「まあ!あなたがユニコさんが仰っていた巨体族のアックズさんですね?・・・この度は、ひと月ほどの間ご厄介になりますが・・・どうかよろしくお願いいたしますね?」
グラージェナ夫人は立ち上がって向きを変えて、二人の娘ともどもアックズに頭を下げたのだが、その後、頭を持ち上げたときに、彼女とアックズの目が吸い寄せられるようにピタリと合ったのである。
(アレレ?・・・なんか、LOVE数珠オーラの光が・・・見えるんだけど~?)
───そう、これがミアアの特殊能力のひとつ───他の人のLOVEの気持ちを視覚的に見ることができるのである。
ただし───自分自身のLOVE数珠オーラは見えないのであるが・・・
(まあ!なんて逞しくて素敵な方!)と思うグラージェナ。
(うう・・・気品があって、なんて綺麗な女の人なんだ!)と思うアックズ。
あっという間に相思相愛・・・・・・!!
「それじゃあ、アックズさん!!」
ミアアがいきなり話しかけたので、見つめ合っていたアックズとグラージェナ夫人は思わず『ビクッ!』とした。
「アックズさん! グラージェナさんと娘さんをよろしくお願いしますね!!」
ミアアは内心(エヘヘ・・・)と思いつつ、元気な声でアックズを景気づけた。
「あ? ああ、もちろん!不自由のないようにするつもりだ!」
アックズはそう言うと、ちょっと照れながらもグラージェナ夫人たちを促し、彼女たちが持ってきた3つのスーツケースを軽々と脇に抱えて二階への階段を上っていき、グラージェナ夫人もあこがれの眼差しでその後に続き、メローナとレモーナの双子の娘もその後をついて上がっていった。
さてさて、何とは無しに一段落───
「これは~、久々の旅行だニャン!! 美味しいもの食べれるニャン!!」
ミアアは、何んとは無しにうれしくなってきて家の中の小川をピョンと飛び越えて、また踵を返してピョンと跳ねて戻ると、思わずラットンの首根っこにかみついた!!
「ウニャニャン!! ガブッ!!」
「イッ!テェーッ!!」
噛みつかれたラットンが叫んで首をすくめる。
「ウにゃにゃにゃにゃ~!!」
そのままソファに倒れこむ二人(二匹?)であった───もっとも単にミアアがじゃれているのであるが・・・なされるがままのラットン。
そんな二人の様子を電話越しに感じ取った小鬼人族のユニコ部長は、
『フーーーッ!』
とため息をつくと、
「まぁ、うまく探してくださいよ? ラットン社長とミアア副社長?」
彼はそう言い終えて投影電話を切った。
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