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 というのも、母がなんとも形容しがたい表情で立っていたからだ。 「昨日はごめんなさい」  開口一番。母は謝罪をした。  昨日のことか、と思わずため息をこぼしそうになる。  わたしは何でもかんでも檻にしまい込もうとする大人の考えが嫌いだ。それはまるで一人の人間として認められていないような気がするからだと思う。  面倒くささを少しも出さずに、当たり障りなく、母を納得させるためにはどうしたらいいのだろうか。そう思考を巡らせていると再び母が口を開いた。 「学校に行きたくなければ、行かなくてもいいって母さんはそう思っているのよ。でもね、どうして行けないのかってことは知らないと解決できないでしょ……だから……」  その後の言葉はノイズが入ったように聞こえなくなる。  解決って何だろうか。  学校に行くことが偉いことなんだろうか。みんなと同じ服を着て、同じことをして、そんな檻の中で生活するのが正しいのだろうか。大人たちはいつも肝心なことを教えてくれない。  普段は子どもとして扱っているくせに、都合のいい時だけもう大人なんだから自分で考えなさいと言ってはぐらかす。  ——あなたのことを想っているのよ。
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