潔癖ではない

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潔癖ではない

特に私は潔癖症という事でもない。 掃除が凄く好きという事でもない。 強いて言うなら、いる物といらない物を仕分けするのは好き、自分で選んで買った物も人から戴いた物も長く丁寧に付き合うのが好き、それから人と一緒に突く鍋は嫌い。 今はこんな時で一人鍋が堂々と準備されて、堂々と食べられてそれだけは少し不幸中の幸い。 友人を何人も家に連れて来て言ったわよね。 「鍋がしたくなった!材料買って来たし、みんなで食べて飲もう。」 会社から急いで帰って、真ちゃんがお弁当買って行くから慌てるなって言ってくれて嬉しかったのに、人の部屋にいきなり友達連れて来て鍋しようって言う神経を疑ったわ。 結局、バタバタと鍋の準備をするのは私で、真ちゃんは友達と買って来た缶ビールで乾杯。 その上、菜箸を取り箸として入れてあるのに、みんな直箸で鍋に箸を突っ込んで取るのよね。 「ねぇ、真ちゃん。取り箸使ってよ。皆さんにも言って。」 小さな声で真ちゃんの耳元で言うと、大きな声で笑って言ったよね。 「馬鹿だなぁ。みんな変な病気ないから大丈夫だって!それにな?こうやって箸が鍋の中に入るだろ?鍋はぐつぐつ煮えているから、熱湯で煮沸消毒されているんだよ。」 みんな酔っ払いだから、そうだって笑ってた。 私は苦笑いしながら、四人の男性が箸を突っ込んだ鍋から食べる気はしなかった。 会社の同僚はこれを潔癖と言ったが、これは違う。 私は「育ち」だと思う。 そういえばそれを言ったら真ちゃんはひどく怒ったね。 「俺の家が下品で、貴子の家が上品だって言うのか!!」 「…そういう意味の育ちじゃなくて…。」 「じゃあ、どういう意味だよ!!お前だって部屋の掃除雑じゃねぇか!」 怒鳴られてムッとした。 確かに得意ではない。 洋服とか散らかしてる事もあるし、忙しくて掃除出来ない週もある。 だけど週に一度は必ず掃除機を掛ける様に努力はしているし、真ちゃんが来る時は綺麗に片付けをしている。 結局、その喧嘩も有耶無耶になり、外食も減り、真ちゃんが急に友人を連れて来る事も無くなった。
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