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「そうだね。ちなみにどんなお店か知ってる?」
『…………話題のフレンチとか雑誌に載った女性人気のコース料理のお店とかかな?』
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「………そんなとこ、連れてってもらったことない。」
下を向いたままポロッと口から言葉が漏れた。
休みの日にデートはある。
だけど会社終わりの平日は大体が真ちゃんが部屋に来る。
連絡を入れて突然来ることが多く、中途半端に遅くなった時は特に多かった。
ーー「お腹空いた。なんか食べさせて。」
時々は食材を持って来てくれたりもするが、回数は段々と増えて、最近は週の4日は貴子の部屋で夕食を食べていた。
だから逆に来ない昨日と今日みたいな日は珍しく貴重だったのだ。
『いや。でもさ?取引先だと高い店とか仕方ないよ、な?』
『うん。そうだよ。相手担当者が女性だと個室はアウトだし気を使うよな?』
『確かに!かと言って居酒屋では仕事の話はできないし、高級店なら出来るよな。』
と、男性方は口々に言ってくれる。
『ほらぁ。だから恋の話は止めようって言ったの。場が暗くなるでしょ?もう止めよ?』
橋本に言われてみんなでうんうんと頷き、違う話題に変わり、スマホが鳴る。
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『話聞くよ?気になってる?俺の所為でごめんな?』
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下を向けた目線を戻すと、コマ割り画面に申し訳なさそうな倉石の顔が見えた。
倉石は同期でも優しいタイプで、きっと見てしまった事を思わず口にしたのだと思う。
気にしないで。とメールを返すとまた鳴る。
今度はグループメールの申請で、伊藤菜々と倉石貴之からのもので、画面をタップした。
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『ほんと、ごめん!!』
『何回見たの?もし浮気なら許せないし!』
「……菜々?大丈夫だよ。食事なんて普通に行くでしょ。」
『食事はね?2か月前ってどうして思ったのかよ!貴子もそこ気になっているんでしょ?もやもやしたままより聞いた方が早いって。』
「まぁ。そうだけどね。」
『……俺の思った事で、2か月前から昼休みとか空き時間に雑誌とかスマホで検索してる事が多くて、先輩の女性によく外食する人がいて、良いお店あったら教えて下さい、彼女連れて行きたいんですとか話しているのを聞いたんだ。』
『それならこれから連れてってくれるかもしれないよね?貴子、よかったね。』
「……うん。」
そうかなぁ?って心で思っていたら爆弾を落とされた。
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