まってる

1/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
 ある冬の弱い吹雪が吹いている時のこと、真っ白な雪の中に茶色くふわふわな 生き物が懸命に動いていた。  茶色いうさぎのチャイロは、冬眠から目が覚めてしまい、そこからなかなか寝付けなかったため白くなった外を少し散歩していたのです。  ですがしばらく散歩をしていると、段々と吹雪が吹いてきました。そのことにチャイロは少し焦って急いで巣穴へと戻ろうとしますが、今は吹雪が吹いている時です。弱い吹雪だったので、人間ならすぐに家へと帰れたことでしょう。  でもチャイロはうさぎです。小さなうさぎです。うさぎの視界は低く、あたり一面を覆う白い雪しか見えません。  なのでチャイロは迷ってしまいました。  しばらく迷いながらもチャイロが進んでいた時、少し遠くから自分と同じくらいの大きさであろうシルエットが見えてきました。  チャイロはなんだろうと思い、そのシルエットへ近づいてみました。  シルエットへ近づいたチャイロはその正体に気づき顔に笑みを浮かべました。  その正体は、チャイロの友だちシロでした。  シロは名前の通り身体中が真っ白な毛で覆われたうさぎです。  チャイロがシロにさっきとは違い早足で近づくとシロもこっちに気づき、顔をこちらに向けました。  久しぶりに会った友だちにチャイロは少し興奮気味にシロに話しかけました。  「こんにちはシロ!久しぶりだね!」  「こんにちはチャイロ。本当に久しぶりだね、元気にしてた?」  「うん、元気にしてたよ!シロは元気にしてた?」  チャイロはそう言って、ふとシロの体へと目を向けました。  シロの体は以前会った時より痩せたように見えます。  「私も元気にしてたよ」  そうシロは返事をしました。  それを聞いたチャイロは安堵の息を()らします。  うさぎはよく肉食動物の餌食になります。自然の摂理のためそれは仕方のないことです。それでも月日が経つたびに仲間が一匹、また一匹といなくなってしまう現実をチャイロは見てきました。  だから友だちのシロの「元気にしていた」という言葉を聞けただけでもチャイロは安心するのです。  「ところで、シロはここで何をしているの?」  「待ってるの」  「誰を待ってるの」  「⋯⋯⋯」  何故かシロはその質問に答えず、ただ微笑むだけでした。  ふとチャイロはキョロキョロと周りを見てあることに気がつきます。  「⋯そういえば、クロは?あの子はどうしたの?」  クロというのはシロと一緒に行動を共にしていた真っ黒なうさぎのことです。  シロがクロと行動を共にするようになってから、二匹が離れることはほとんどありませんでした。  ですから、シロの隣にクロの姿が見えないのがチャイロにとって不思議だったのです。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!