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その物語を聞いたあとチャイロはクロがどうなったのか気になりました。
「じゃあ、クロはどこにいる⋯の⋯」
そうシロに訊きながらチャイロはある事に気がついて、その語尾を段々と弱めました。
よく見るとシロの隣には小さな白い山がありました。
チャイロはまさかと思い、その白い小さな山を削る事にしました。
なるべく早く、でも丁寧に削っていきます。
小さな白い山を削ると、中から息のしていない冷たくなったクロがいました。
クロの首を見ると物語の通り動物の、おそらく狐の噛み跡がありました。
でも変です。物語の中ではクロはまるでまだ生きているかのように語られていました。少なくともチャイロにはそう聞こえていました。
でもクロの首を見ても噛まれてすぐ死んだとしか思えない噛み跡がそこにはありました。
「シロ⋯クロ⋯死んでるよ⋯」
「⋯⋯⋯」
シロは何も言いませんでした。
「ねぇシロ、私の巣穴に一緒に行こう?このままだとシロも死んじゃうよ?」
それを聞いたシロは首を横に振り「私はここで待つよ」と悲しそうに微笑んだ顔で言いました。
「何言ってるの!こんなところにいたら本当に死んじゃうよ!」
お願いだから一緒に行こう、とチャイロは何回もシロに言います。
このままだとクロと同じようにシロも死んじゃう事は分かっていたからです。
それでもシロは頑なにここで待つと言って首を縦にふりませんでした。
ほんの一瞬、チャイロはシロと同じようにシロの意見が変わるまで待っていようかとも考えましたが、その考えは頭を振ったと同時にチャイロは消しました。
なぜなら明らかに自分を自ら死へと導く行為だと分かっていたからです。
何度言ってもシロの意見は変わらないままチャイロはとうとう諦めました。
「⋯そっか、分かったよ⋯」
チャイロはそう言って踵を返して元来た道へと戻っていきました。
シロはただただ悲しそうに微笑んでチャイロの後ろ姿を見届けていました。
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