お誕生日なのにおこられた!

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「いい時間だし、ケーキ食べようか」  ママが言った。 「もう4時か。早いな」  パパが部屋の時計を見た。 「ケーキ! あるの?」とわたしが聞くと、ママがようやく笑った。 「さっきパパが買ってきてくれたよ」 「リカの好きな、イチゴのケーキ。今日はホールケーキだぞ!」  パパは、笑うと目が糸みたいに細くなる。 「120度ずつ食べられるじゃん!」  わたしも顔に力を入れるのをやめた。 「お、計算早いな」  パパがわたしの頭をぽんぽんとたたく。パパの手は重かった。 「だってもう12才だもん!」  力をぬいたわたしの顔は、ゆるみきっていて、にやにやで、にこにこで、全身でうれしさを表現してしまってると思う。 「お誕生日おめでとう」とママ。 「おめでとう」とパパ。  わたしは、おそうじも悪くないかなって思った。少しだけ。本当に、ほんの少しだけ。
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