19人が本棚に入れています
本棚に追加
「いい時間だし、ケーキ食べようか」
ママが言った。
「もう4時か。早いな」
パパが部屋の時計を見た。
「ケーキ! あるの?」とわたしが聞くと、ママがようやく笑った。
「さっきパパが買ってきてくれたよ」
「リカの好きな、イチゴのケーキ。今日はホールケーキだぞ!」
パパは、笑うと目が糸みたいに細くなる。
「120度ずつ食べられるじゃん!」
わたしも顔に力を入れるのをやめた。
「お、計算早いな」
パパがわたしの頭をぽんぽんとたたく。パパの手は重かった。
「だってもう12才だもん!」
力をぬいたわたしの顔は、ゆるみきっていて、にやにやで、にこにこで、全身でうれしさを表現してしまってると思う。
「お誕生日おめでとう」とママ。
「おめでとう」とパパ。
わたしは、おそうじも悪くないかなって思った。少しだけ。本当に、ほんの少しだけ。
最初のコメントを投稿しよう!