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抗体
「えーっ!!それじゃ…」
「そうです…非常に申し上げにくいのですが…
プラティナ様と二人のお子様達は暫くはお部屋に戻られない方が宜しいかと…」
医師が残念な知らせを持ってジュエラ王宮へと戻ってきたのはその日の昼下がりの事であった…
身を寄せ合うように医師の話をみんなで聞いている優也達だったが予想外のその話の内容に顔を見合わせて全員が驚きを隠せない…
「ゴホン…」
一つ咳払いをしてからゴルドは改めて医師に一つ一つ確認をするように語り始める…
「…では要約するとこういうことですかな…?
あの人間界の『らっきょう』という食べ物は我々、魔法使いの持つ因子に反応して軽い神経性の毒物に変化する…
困ったことに残留魔法因子にも反応してしまうのでその毒物はガス状にも変化して部屋中に充満してしまって今回のような事が起きてしまった…
しかもこのガスは空気より遥かに重く、時間をかけて空気に溶けていくために換気をしようとも部屋から追い出す事が困難じゃと…」
「…流石はゴルド様…ご理解が早くて助かります…
研究室でも色々な薬品で試してみたのですが…
まだ中和剤の発見には至っておりません…」
申し訳無さそうに肩を落としながら話す医師に対してゴルドは…
「なあに…原因が分かったのなら…
対策もそのうち分かるじゃろうて…
それよりもワシは一つ分からん事が…」
「…ナギのことじゃな…」
ゴルドの背後から…ヒョコッと顔を出したのは
ソーディア前国王でナギの父親のマサムネであった。
「おお…マサムネ!!聞いておったか…⁉︎」
「すまぬ…
盗み聞きするつもりは無かったのじゃが…」
「ハハハ…そんな事…
ここにおる誰もが分かっておるわい!!」
「お父様…私…私だけ何故…
らっきょうが大丈夫なんでしょうか?」
マサムネは医師の表情をチラリと見て…
「うむ…それはな…多分…
ワシとお医者様の先生の意見は同じようじゃな…」
「コホン…ナギ様の件でしたな…それはおそらく…
以前、ワルキューレの毒に侵された時にスクリュードという薬草を摂られたからではないかと…」
「おお…あのオオカミが持って来てくれたという…」
「左様でございます…あの薬草は強い浄化作用の因子を含んでおり、ナギ様の体内ではスクリュードの因子…優也様達…人間のお身体に例えると抗体が今でも体内に入ろうとしている悪い物を浄化しているのだと思われます…」
「なるほど…」
一同は医師の話に納得したのと同時にある考えが頭に浮かんだ…
「そうよ…じゃあ…
そのスクリュードを私達が摂れば…」
プラティナは嬉しそうな声で叫んだのだが…
「…無理だな…」
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