仰せのとおりに…

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仰せのとおりに…

バチバチバチバチ… ナギのすぐ側に電気エネルギーの塊が現れ、四つ足の獣を形取り…顔を上げて優也達に向かって語りかけた… 「フェンリル…」 「フェンリルちゃん…」 「エメラルダの森のスクリュード… あれはナギの命を救ってくれた分で最後だ…」 「まあ…」 「そうか…」 「精霊の俺は森にいる者… 全てを把握しているつもりだ。 最後のスクリュードがナギの命を救った… おそらくはもう…どこの森や林にも… しかし種が途絶えたことが俺は残念だなんてこれっぽっちも思っちゃいないぜ。 ナギは森を…自然を心から愛してくれている… これからきっと何百、何千もの自然の生物が幸せに暮らせる環境を作ってくれると信じてるんだ。 だから俺はお前達と一緒にいるのさ…」 その言葉にナギは涙を浮かべ、声を詰まらせながら 「勿論よ…約束するわ。必ずみんなが幸せに暮らせる世界を作ってみせるわ…」 そう言って優也の表情(かお)を見上げた。 勿論、優也は笑顔で彼女の言葉に大きく頷いた。 「でも…困ったわ… 特効薬がもうこの世にないとなると…」 期待していた分、少しガッカリしたような表情のプラティナに優也は 「大丈夫…きっと見つかるよ!! たとえ魔界には無くても代わりになる物が人間界にあるかもしれないよ!! 数日後にはティナ達も部屋に戻れるからそれまでは こっちにいて…僕は大丈夫だからなんとか一人で過ごすよ。」 「でも…あなたの身の周りのお世話が出来ないわ… お仕事でお疲れになっても… 妻として何も出来ないなんて…」 「大丈夫さ…君と出会うまではこれでもなんとか自炊して暮らしていたからね。 君は少しの間、息抜きするつもりでゆっくりしなよ…」 「ダーリン…」 二人の会話を聞いていたゴルドとマサムネは自然と目が合った瞬間…ニヤリと笑い合う… 「婿殿…お前さんは本当にティナに優しいのう…」 「え、ええ…お義父さん… ティナはいつもこちらで仕事をしながら家事も… 本当に僕はティナのおかげで仕事も上手く出来てますから…」 「だったらやはり嫁は必要だという事じゃのう…」 「マ、マサムネさん… そりゃそうです…ティナのおかげで僕はどれだけ…」 「仕方ない…ナギよ… しばらくはワシが国王代理をしてやるからお前は プラティナ王女の代わりに婿殿の世話をしてあげなさい… それで良いかな…?ゴルドよ…⁉︎」 「えーっ!!!」 「えーっ!!!」 陰と陽… 二人の王女は表情は違えど驚嘆の声を上げた… しかし…彼女達よりも、もっと驚いた優也は… 「そ、そんな…ナギさんは国王じゃないですか… 一国の国王にそんな…」 「婿殿…それを言うならティナだって肩書きは次の国王戴冠までの国王代理じゃが…ジュエラの国王には変わりないぞ…」 「ぐっ…」 「まあ…良いではないか… お主はジュエラ、ソーディア、そしてミラールの三国が認めた騎士(ナイト)じゃぞ… 特に我がソーディアでは世界最強と謳われる軍からも『人間界から来た最強の魔法使い』と一目置かれておるではないか… 国民の中にはジュエラとソーディアを統合し、婿殿を王に迎えたらという声もあるくらいじゃ…」 「そんな…畏れ多いです…僕なんかが…」 マサムネは息子に向かって語りかけるように… 「婿殿… お主がプラティナ王女を心から愛しておる事はよく分かっておる… だから少しの間だけ日頃の騎士への感謝の気持ちとして我が娘…ナギの好意を受けては貰えぬか…⁉︎」 その時…優也の側に実体化したワルプルギスが現れた。 「優也よ…良いではないか… 王女と言えどナギも一人の女じゃ… 本懐を遂げさせてやるのも男の甲斐性じゃぞ… 事が済んだらまた乳嫁を大事にしてやれば良いじゃろ…⁉︎」 三人からの圧力にトドメを刺すように… 「いいんですよ…優也さん… やっぱり…私はティナのように優也さんを満足させられるかどうかは分かりませんから… でも…もし… しばらく私で我慢していただけるなら… 誠心誠意…殿方に尽くすように心構えは出来ておりますわ!! それがソーディアに生まれた女性の誇りですから…」 「いやいやいや… 嫌だなんて…そんな…とんでもない!! 人間界にもナギさんのような美しい女性はなかなか居ないですよ… だから我慢するなんてことは決して…」 「おお…それではナギを喜んで受け入れてくれると言うのか…流石は婿殿じゃ!! ナギよ!!先程言うたように誠心誠意、婿殿に尽くすのじゃぞ…」 「はい!!お父様…!!仰せのとおりに…」 「な、なんでこうなっちゃうの…アハハ…ハ…ハァ…」 優也の反論の余地は何処にも無かった…
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