あなたがいてくれること

1/1
前へ
/48ページ
次へ

あなたがいてくれること

ナギは嬉しさのあまり立ち上がって優也の元へ… そして彼を思いっきり抱きしめた。 「嬉しい… ナギ…こんなに嬉しい事は初めてですわ…」 …ギュウゥゥゥゥゥゥゥゥ… 「ムギュッ…ちょっと…ナギさん… …く、くるし…ムギュッ…」 優也はプラティナに負けず劣らずの柔らかさ… そして…弾力と息苦しさを感じていた。 「あっ…ご、ごめんなさい…」 「いや…大丈夫…慣れてるから…」 「えっ…⁉︎慣れて…⁉︎」 「い、いや…何でもないよ…アハハハハ… そうだ…コーヒーを淹れるよ… ナギさんは…ハーブティーの方がいいかな…⁉︎」 自分の席に戻ったナギは優也の言葉にキュッと眉をしかめて拳を握りしめながら… 「…優也さんと同じものが良いです!!」 「そ、そう…?お砂糖は…?甘い方が好き?」 「優也さんは…?」 「僕はブラックだけど…」 「じゃあ私も…それで…」 …ホントに大丈夫かな…⁉︎ 気にしつつも自分と同じブラックコーヒーのカップをナギに差し出した優也… 「いただきます……ウッ…ゴホッ…ゴホゴホ…」 「だ、大丈夫…⁉︎やっぱりお砂糖とミルクを…」 「カチャッ…」 コーヒーカップを置いて…俯くナギ… 「私…優也さんに迷惑かけてばっかりで… こんなんじゃティナの代わりなんて… やっぱりお嫁さんになるのって私にはムリなのかな…」 優也は微笑んで席を立ち、涙を浮かべるナギの手を取った… 「さあ…王女様…参りましょうか…」 「えっ…ど、何処へ…」 優也の差し出す手に自分の手を重ねるナギ… 「キャッ…⁉︎」 次の瞬間、彼女は優也に抱えられてソファーへと運ばれた… 「ナギさん…僕、ナギさんにお願いがあるんだ…」 「は、はい…何でしょうか…?」 ソファーにかけて自分の顔を見上げているナギに優也は 「ちょっとそのままでいてね…」 「は、はい…」 …これってもしかして…ゆ、優也さん… …お、男の人だもんね…い、良いんだよね… …でもティナに…ううん…今は私が優也さんの… …ファサッ… …えっ…⁉︎ 優也はソファーに寝転がってナギの太腿(ふともも)に頭を乗せた。 「ゆ、優也さん…」 「ゴメンね…重いかな…⁉︎」 想像もしていなかった優也の行動にナギは面食らった。 「…い、いえ…全然…」 自分の膝に彼の顔がある… 今までで最近距離の優也にドキドキが止まらない… 「優也さん…」 「…ねえ…ナギさん…」 「は、はい!!」 「ありがとう…」 「な、何故ですか…?私、何もしていませんよ…」 「こうしていると楽なんだ…仕事の疲れも飛んでいくよ…」 「そ、そうですか…」 「側にいてくれるだけで良いんだよ… 大好きな女性(ひと)が側に… それだけで男性は頑張れるんだ… 何かをしてあげる事が大事なんじゃない… あなたがいてくれる事が…嬉しい…」 …グスッ… ナギの大きな瞳が涙で潤んでいる… …私…バカだ…張り切っちゃって… 美味しい料理や楽しい話題なんて無くても良かったんだ… こんなに愛しているなら… 素直に心を開くだけでこの人には分かってもらえたんだ… ナギの瞳に溜まった涙が溢れ出して頬を伝い、優也の頬に一粒流れ落ちた… 「あっ…ゴ、ゴメンなさい… すぐに……優也さん…⁉︎」 スゥスゥと小さな寝息を立てて優也は寝入ってしまっていた。 ナギはクスッと笑って… 少し身体を曲げると、右手で綺麗な長い髪をかき上げて自分の膝の上の最愛の人に… 愛情がたっぷりこもった熱い熱い口づけを交わした…
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加