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ご褒美
「私…あの時からずっとあなたを尊敬していますし…優也さんの影を追いかけています…」
「僕もさ…」
「えっ…⁉︎」
「…なんて綺麗な心を持った人なんだろう…って思った。
まるで森の動物達しか知らない木々に隠された淡いブルーの澄んだ泉のような…」
「優也さん…」
「僕達、人間はね…結構小さな事でクヨクヨしたり、言いたい事も言えずに飲み込んだり…
それがティナやナギさん…
お義父さんやお義母さん…
君のお父上…
魔界の人々って気持ちいい位に真っ直ぐに本音をぶつけてきてくださるんだよ…
だから僕も君から学んだんだ…
駆け引きなんか無しで…
人と本心で話すことや
人や自分と真摯に向き合う事の大切さを…」
「………」
ナギは胸が詰まって言葉が出なかった…
代わりに溢れん位の感情の波が涙となって彼女の頬を伝う…
両手で顔を覆い…
真っ直ぐに優也の胸に飛び込んだ…
「うううう…ヒック…
私…こんなに嬉しい気持ちになったのは初めてです…ううう…」
優也は微笑んでナギの頭を優しくそっと繰り返し撫でた…
一頻り泣いた後、ナギは顔を上げて…
「優也さん…私…あの時よりも少しは目標に近づけているでしょうか…⁉︎
国王と言っても…色々周りの皆さんが支えてくださっているだけで…私には正直、実感が…」
優也は黙って頷いて
「…もしも…ナギさんが立派な国王だと認めていなかったらみんなが支えようという気になるかい?
あなたと素晴らしい国を創っていきたい…
みんなそう思っているよ…
みんなを信頼して頼る事…これも立派な国王の資質じゃないのかな…⁉︎」
その言葉に少しホッとした表情を見せたナギ…
「じゃ、じゃあ…優也さん!!
…お願いがあります!!」
「何だい?」
「約束通り…一つだけご褒美を頂けませんか⁉︎」
「ご褒美…?欲しい物があるの…?
分かった!!僕に出来る事なら何でも…」
「ありがとうございます!!じゃあ…」
ナギは優也の手をギュッと握って勇気を振り絞って
言った…
「私がここで優也さんのお世話をさせて貰っている間…私を本当の妻だと思って貰えないでしょうか…?」
「えっ…ナギさんを…⁉︎」
「どうか私の願いを聞いて下さい…
ホントにホントにお願い致します…」
そう言って頭を下げるナギを見つめて優也は困り果てていた…
「弱ったなあ…」
「こりゃ!!優也よ…」
「ヴァ、ヴァル…⁉︎」
頭の中にヴァルプルギスの怒鳴り声が響き渡った…
「お主…まだ分からんのか…?
仮にも一国の長が頭を下げてお主に抱かれたいと頼んでおるのじゃぞ…
はあ…情け無い…
チャチャっと望み通り子種を分けてやって一言、『良かったぞ』と褒めてやるくらいの甲斐性を見せたらどうなのじゃ…全く…
普段はあんなに頼りになるのに…こと女子についてはからっきしじゃのう…」
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