お留守ですか?

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お留守ですか?

ドアの前で呪文を唱えるナギ… 隙間から眩しい程の光が漏れてくるそのドアを開けて… 彼女は人間界…優也のマンションの前へとやって来た… 彼の部屋を見上げてまだあどけなさの残る可愛い笑顔でクスッと笑った彼女はエレベーターへと乗った。 ドキドキドキドキドキドキ… エレベーターの天井を見上げて呼吸を整える… 数字が彼の部屋の階を指し…ドアが左右に開くと 彼女はまるで子供のようにジャンプしてそこから降りた… 「よっ…っと…ウフフフフッ…」 コツコツコツコツコツコツ… 廊下を抜けて優也の部屋の前に立ちドアを見つめる… 「優也さん…」 そっと伸ばした指でインターホンのボタンを押す… ピン…ポーン… ドア越しに中で響いている音を聞きながら応待を待つナギ… 「あら…⁉︎」 彼女は首を傾げながらもう一度ボタンを押した… ピン…ポーン… ピン…ポーン… 何度もボタンを押すが応答が無い… 「おかしいなぁ…優也さんもティナもこんな朝早くから出かけるなんて… しかも今日はお休みだと聞いていたけど…」 左手の手提げの籐籠(とうかご)を見つめる… 「お昼には召し上がって頂かないと… 痛んじゃうわね…」 何げなくドアの覗き穴から中の様子を伺おうと一歩前に踏み出した彼女だったが… 「キャッ!!」 ドッシーン!!! 足を滑らせてしまい… 大きな尻餅をついてしまったのだった… 「痛〜い!! …あーん…なんでこんな目に遭うんだろう… 私はただ…みんなに…サンドウィッチを… 優也さんの美味しそうなお顔が見たかっただけなのに…」 (※途中から彼女は心の声がダダ漏れなのに全く気づいていません) しかし…いつまでもこうしていても仕方が無い… そう思ったナギはドアのノブに手をかけて立ち上がろうとした。 …グルン…カチャッ!! 「…あら…⁉︎」 偶然彼女が握ったノブが回った… 「あ、開いてる…」 驚いた彼女はすぐに立ち上がって… ドアをゆっくりと二、三センチ開けて中を見つめた… 当然のことながら… 休日の…しかも朝早く… お客様がインターホンを鳴らしても応答が無い部屋に人の気配などあろう筈も無かった… …まだ寝てるのかな…⁉︎ まさか…出かけている…? …なんて… ドアを開けたまま外出はしないでしょうし… 色んな事を考えながらナギは更にドアを開けて玄関へと入った… (※良い子のみんなはマネしないで下さい…) 「おはようございます!!! 誰かおられますか…⁉︎ ティナ!!!優也さん!!! 私です!!!ナギです!!!」 しかし…その声も空しく辺りに響くだけで何一つ返事は無かった。
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