二重のビニールバッグ

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二重のビニールバッグ

「おお…婿殿よ!!先に戻ってきて済まなかった… まさか…あれ程とは思って無かったわい…」 「お気になさらないで下さい… それより頭痛のほうは大丈夫ですか…」 「ああ…ティナの言った通りじゃった… こっちに帰ったら全く何ともなかったわい。 しかし…一体何が原因なのか…」 「おそらく…原因はこれです…お義父さん!!」 優也は二重にしたビニールバッグをゴルドに見せた。 「何じゃ…これは…何か細かく刻んだ物が入っているようじゃが…」 「僕が刻んで入れたんです…これは人間界の食べ物で『らっきょう』という物を酢漬けにしたものです。 少しクセがあるので人間の間でも好き嫌いがありますね…」 「ふーむ…これが…」 横からティナが顔を出して同じようにビニールバッグを眺める… 「あっ!!これ…ひょっとして… お義母様が送ってくださった…」 「実はそうなんだ…ゴメンよ…ティナ… ミスとリルにも迷惑をかけてしまって…」 「そんな…何故あなたが謝るのよ… それにお義母様にだって私は本当に感謝の気持ちで一杯よ…」 「ティナの言うとおりじゃよ…婿殿…」 ナギも大きく頷いて… 「わ、私もそう思いますわ…」 「ありがとうございます… でも…この話はこれで解決したも同然です。 僕がらっきょうを食べなければ良いだけですから…」 安心したような表情で話す優也に返ってきたプラティナの返事は意外なものだった… 「…ダーリン!!それはダメよ!!」 「えっ!!どうして…⁉︎ また君や子供達の体調に影響が出たりしたら…」 「婿殿…ティナはこう言いたいんじゃよ… 自分の為に愛する人の好きな物を奪いたくない。 それに自分を大切にしてくれる御母堂(ごぼどう)へ申し訳ない気持ちで一杯だ。 だから何とかして克服する方法を見つけたい… そうじゃろ…ティナ…」 大きな瞳に涙を浮かべてプラティナは優也を見つめながら大きく頷いた… 「ティナ…」 自分と家族を大切に想ってくれている… 清々しい程に純粋なプラティナの愛情に優也も同じように涙が浮かんできた… 「ティナ…気にしなくていいんだよ… 僕も君と同じさ…君や子供達と安心して暮らせるなら…らっきょうなんか…」 「ダーリン…」 「ティナ…」 二人は熱い抱擁を交わす… その時…ゴルドが… 「しかしのう…婿殿。 ワシも一度…キチンと対策を考えておいたほうが 良いと思うのじゃよ…」 「お義父さん…」 「ワシもティナも…お主や周りの人達を見ているといつかはワシら…魔法使いと人間は足りない部分を補ってさらに繁栄する事が出来ると思うておる。 それにはこういう問題を少しでも解決する事がそういう世の中に向かう道標の一つになるのではとワシは思うのじゃが…」
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