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1 真夜中の客
広大な面積を持つこの国の、首都からは大分離れたこの街には、独自の文化が息づいていた。
街は、そこに住む人たちの生活仕様で作られる。
国を動かす機関が多く立ち並ぶ首都は、つんと澄ましたような顔をしているが、この街は、人々の生活がそのまま街の顔になっている。
大通りから一本枝道を入ると、そこには野菜や肉、魚や香辛料など、さまざまなものを扱う市場が、間口を寄せ合うように並んで、客を呼び込んでいる。
次の道を入ると、買ってその場で食べられる、惣菜や様々な食べ物、飲み物を売る露店がずらりと揃い、その日の気分で選ぶこともできる。
白い教会がある通りは、本屋や文具店が軒をならべ、ある通りは家具や皮製品などの工房が並び、職人通りと呼ばれていた。
そうやって、道筋ごと客層に分かれたさまざまな町並みが続いている。
それら市街地の周りには、古い石造りの住居がひしめいている。
一角には、建物ひとつが一軒の家、といった、おしゃれな高級住宅街もある。
そんな裕福な家は一部に過ぎず、ほとんどは、上まで伸びる階段が、まるで建物を装飾するかのように見える、安価なアパート群だった。
…その夜、何気なく点けていた小さなテレビには、古い洋画が掛かっていた。
男女の切ないストーリーよりも、バックに流れる音楽が気に入って、BGMのように聞き流していた。
ソファに横になりながら、雑誌を捲っていた彼が、コツコツという音を捉えたのは、もう夜も11時を過ぎた頃だった。
そっと立ち上がって、扉の前に立って様子を窺うと、まだドアを叩く音がしている。
「誰だ?」
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