サント・マルスと混沌の邪神ーアトラテック編ー

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「何とかする。お前は心配しなくてもいい。とにかく 走らせる事だけを考えろ。」 「何とかって、なんだよ。ナンバー偽装したら犯罪 だからな。」 「その先の事は考えるな。」 「・・・もう・・・。どうにかはなるんだな。 分かったよっ、もう・・・。」 幸い、何も問題は起きる事もなく目的地へ着いた。 「ここは・・・?。」 学生の頃一度訪れたことがある。確かエーアデの神殿。 この大陸の中心地なはず。 「遂に来たか・・・」 どこからともなくティマイオスの声が聞こえてきた。 「結局は連れて行くんだな。私が認めたとしても、 ユーラントは認めないと思うが。だが、一つだけ 可能性はある。」 ティマイオスは空中に姿を現し、ゆっくりと降りてきた。 「着いてくるがいい。」 ティマィオスは神殿の中に入って行った。ユーリウス達も その後を追った。  神殿の中央部分に魔法陣が描いてある。 「私やユーラントの力でアトラテックの者を異大陸に 転送する事は不可能だ。だが、惑星エーアデの力を 使えば可能かもしれない。」 「・・・なる程、そうか!!。」 「喜ぶのはまだ早い。惑星エーアデが認めなければ そなたの願いは叶わぬかも知れぬ。そしてもう一つ。 大陸神ユーラントによる『転送』。今はまだその時期では ない。それを待つ間、何か遣り残した事があれば今の うちにして置くがいい。この転送が成功すればもう二度と このアトラテックには戻っては来られぬ。」 「遣り残したこと、か・・・。」ユーリウスは考えた。 「俺の名を騙り、俺にテロリストの罪を被せた奴を ぶっ潰す。いいか。」 「そうか、よし分かった。一度アトラテック城内に転送 しよう。力を失ったとは言え、大陸内での転送は何とか 可能だ。それから、」 ティマイオスが渡したのは通信用の携帯端末機だ。神が 電子機器を使う場面にはかなり違和感があるが、力を 失っているのなら仕方が無いか。  ティマイオスの転送によってアトラテック城へ戻って 来た。広間には王が待ち構えていた。「チリカワ殿!!。」  その口調からあまりいい事ではないなとユーリウスは 思った。たぶん、父も同じように感づいているらしい。 「ティマイオスから聞いた。余り勝手な行動は慎んで 頂きたい。それにロナウハイド君も一緒だったというでは ないか。彼は今大事な身の上だ。余り外には出さんで 頂きたい。あと、それから・・・。」 王はチヘンネをちらりと見た。 「君がここまで頑固者だとは思わなかった。まあ、今回の 事はやむを得ず認めるが以後はないと思ってくれ。」 「分かりました。」 「この大陸が滅びを迎えるまであと千二百日余り。その間 我らにはやらねばならぬ事が山ほどある、まあ、もっとも 何かしていないと精神がおかしくなりそうだからな。」 王もやはり恐怖を感じているのだろう。だが、立場上冷静で 居なければならない王の身の上を思うと歯がゆい。 「まあ、説教はこれぐらいにして・・・。ところで ロナウハイド君。君は今世間を騒がせている爆弾魔に名前を 使われ、警察に追われていると言ったな。」 「ええ、そうですが・・・。でも、それを、何故・・・?。」 「ティマイオスから聞いた。そして転送時期の前にそれを 解決したいとも。で、我々も協力しようと思っている。」 「え・・・そうなのですか・・・。お気持ちは嬉しいの ですが・・・。」 「遠慮するな。全ての世界の救世主として旅立つ君への 餞だと思ってくれればいい。」 「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて。」 「よし、決まりだな。」 王は壁のスイッチを入れた。床が割れ、椅子とテーブルが せり上がってきた。更に部屋の一角にはスクリーンが降りて くる。恐らくこの場はパーティ会場兼会議室なの だろう。かなり合理的な造りになっていると感心する。  王は秘書官が持ってきたノートパソコンを立ち上げ、 インターネットニュースの動画サイトを開いた。画像が スクリーンに映し出される。 「例のテロ活動をしていた犯罪者のニュースだ。二個目の 爆弾を仕掛けたと犯行声明がネットに掲載されて大騒ぎだ。 聞くところによるとロナウハイド君の自宅の近くの 施設のようだな。・・・場所は、確か病院だったはず。」 王が説明するとおり、ニュースのアナウンサーはそれを 克明に報道している。 「・・・警察は付近の住民を非難させ、爆発物の捜索に 余念が無い模様です。・・・現場からお伝えしました。  続いて、次のニュースですが・・・宗教団体ナバホ= ダコタは、過激な布教活動を行っていると住民からの苦情が 相次いでおり・・・。」 王は動画を停止し、閉じようとした。 「あ、今の・・・!!。」ユーリウスは叫んだ。 「今のニュース・・・。もう一度・・・。」 王は動画を再生した。 「・・・間違いない・・・。こいつ。」 「どうかしたのかね。」 「確かWA‐W11VARーSYーUKA・・・随分前に退役したって 聞いていたが・・・。」 「知り合いなのかね。」 「ええ。自衛軍で同期だった人物です。と言っても特別 親しかった訳ではないし、話もした事はない。私が 特殊部隊に配属されるまで同じ部隊に居て、その後退役 したって聞いていましたが、以来会った事はない。だが、 まさか宗教団体に入って居たとは・・・。」
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