サント・マルスと混沌の邪神ーアトラテック編ー

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「宗教団体ナバホ=ダコタ・・・数年前からその名は 聞いたことはあったが、活動が過激になったのはごく最近 だと言われているようだな。・・・ちょっと調べてみるか。」 王は検索ページから宗教団体ナバホ=ダコタを探し出した。 「・・・なる程、『貧富の差の無い理想的な社会を作る』か。 ありがちなコンセプトだな。教祖の名は・・・カレタカ。 『主な活動内容』は・・・普通に布教活動か。」 「これといって特徴の無い宗教団体なのか・・・?。ただ、 『過激な布教活動』というのが気になりますね。」 「動画を調べてみよう。関連するニュースがあるかも しれん。」 王は今度は関連動画を検索した。動画数はそんなに多くは なかったが、地域住民と衝突する場面が多い傾向にある ようだ。 「これが、過激な布教活動といわれるゆえんなのか ・・・うむ。」  これ以上の事は分からなかった。王は一度ページを戻し、 改めてテロ事件を調べようとした。「何!!。」 スタートページのニュース欄に二回目の爆発が起きたと いう記事が載っていた。 「・・・遂に、結局は爆発物が見つからないまま事は 起きてしまったという訳か。」 ニュースの動画には、怪我を負った爆発処理班の隊員が 救助されている画像が映し出されている。「ん?。」 「どうした?。」「ここを見てください。」 王は一度動画を一時停止させた。 「このマーク・・・『宗教団体ナバホ=ダコタ』じゃ ないですか!?。こんな近くで布教活動をしていたのか?。」 「・・・偶然かもしれんぞ。」 「しかし、避難命令が出ていたにも拘らず何故。」 「そこが分からないところだな。・・・まてよ・・・。」 王は検索欄に「犯行声明文、最近」と入力した。すると ユーリウスの名を騙る犯行声明文がずらっと並んだ。と 言っても、一通目と二通目がだぶって並んでいるだけ だった。 「三回目はあるのか・・?。」「それはなんとも。」 暫く考えた。 「そうだ!!。王。最初の爆発の時の映像を開いて下さい。」 「最初の映像か・・・。これだな。」 そこにはあの時の夜の映像が映し出される。母と食事を したあの夜だ。 「『宗教団体ナバホ=ダコタ』。居るのか?。」 視聴者提供の画像を調べるが、それらしいものはない。 やはりただの偶然なのか。 「あ・・・。」 一瞬画像の中に出てきたのはWA‐W11VARーSYーUKAだ。一秒 にも満たない瞬間だったが、恐らく間違いないだろう。 「・・・そうか・・・。」「ええ。」  これ以上調べる事が無いと判断した王とユーリウス。 そのまま今後の事について話し合う事にした。 「テロの事は徹底的に調べたい。犯罪者の汚名を着せられた ままこそこそ隠れているのは我慢ならない。それが今自分が すべきことだと思う。」 すると王は静かに尋ねた。 「何故そこまで拘る?。いずれここは放っておいても滅びて しまうのだぞ。それでも犯人を見つけ出すというのか。」 「いや、私は真実を知りたいだけです。何故自分の名を 騙ったのか。何故テロ活動をしているのか。この大陸が 滅びる前に。絶対!!。」 「お前らしいな。ユーリウス。」 父が苦笑いした。      王の秘書官がユーリウスを見つけて小走りに掛けて来た。 「あ、ロナウハイド様。」 「何か?。」「ご面会の方がいらっしゃっています。」 「分かった、今行く。」 ユーリウスはティターンの防衛庁舎内にある応接室へ向かった。 「あ・・・。」AN-1T-DA=1下佐だ。「元気だった?。」 「一日しか経っていないじゃないですか。で、なんで今日は 私服なんですか。」 「極秘で来てるんだから軍服はまずいでしょ。」 そりゃそうだ・・・。 「キミの家、家宅捜査が入ったみたいだけど・・・ どういう訳か関係者が忽然と消えたって。」 「そうらしい、ですね・・・。」 「それよりも・・・これ。」 ユーリウスの護身用の銃と通信用の携帯端末機だ。 「これを渡しに来たの。私達と直接コンタクトが取れる ようにって。」 「ありがとうございます。」 下佐は不意に顔を近づけた。「で、何か分かった?。」 「えっ・・・。」 「長官が仰るには、キミの事だから犯人探しをするんじゃ ないかって。私達は管轄外だから直接は何も出来ないけど、 何かあったら出来る限り協力するって。」 「そうか・・・。ありがとうごさいます。」 皆が自分を信用してくれる。それだけでも勇気が湧いて くる気がした。テロ事件だけではなく色々なものを背負って いる自分の味方がこんなにいるんだ。そう思うと感謝せずには いられない、だが、その一方で、千二百日で滅びてしまう 大陸から彼らを救う事が出来ないかもしれない歯がゆさも ある。ティマイオスが言うにはこの秩序を守る為、大陸が 崩壊するかもしれない話は決してするなと言われていた。 宿命や運命だけでなく、思いがけず大罪を背負った気分だ。 「じゃあ、私はこれで・・・。」 「わざわざありがとうごさいます。」 「いいえ、じゃ、また後で。」 そう言って彼女は応接室を出ようとした。 「そうだ、・・・私の名前・・・『アメダイー』が本名なの。 敷地外だからコードネームで呼ぶのが不便かなと思って。」 「あ・・・はい。分かりました。」  応接室を出るとどういう訳か母チヘンネが待ち構えていた。 「何でここに居んだよ。」「用事があったんだけど。」 チヘンネはAN-1T-DA=1ことアメダイーを見た。
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