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これは一体どういう事なのか。
「ティマイオス・・・か。あ・・・。」
夢の中でティマイオスに話し掛けられた自分は七歳の頃の
自分だ。家族でイベントパークに行った帰りに起きた
リニアバスでの事故で、生死の境をさまよったあの時の自分だ。
「過去の夢と未来の出来事が混同しているのか・・・。何故。」
この事は当のティマイオスに尋ねても答えは出ない気がした。
「ティマイオスを越える力を持つ者の存在・・・なのか?。」
そんな事を考えているうちにいつの間にか眠りに着いていた。
翌朝、ネットのニュースで何か進展があったか確認している。
しかし、これといって大きな動きは無いようだ。
「おや・・・。」宗教団体ナバホ=ダコタが新たに新着記事を
載せたようだ。そこには新規加入者の募集が大きく取り上げ
られている。
「・・・ま、まさか、何で?。」
そこには「世界の終わりについて」と書かれてある。遂に
千二百日に迫った『日食』の際、邪神ヴァルタヴルカンが
復活し、世界を滅ぼすといった内容だ。「何故・・・。」
そしてその『滅び』から逃れる為には教祖カレタカが作り
だす『道』を辿るより他に無いというのだ。その為に、今
ナバホ=ダコタを信仰し、救いの道を求めよ、という事
だった。
ユーリウスはもう少し他の記事を調べた。ナバホ=ダコタに
関しては批判的な意見が多いようだが、中には、「日食」と
「邪神ヴァルタヴルカンの復活」を関連付けている記事もある。
「そう言えば、何故ティマイオスは日食で邪神ヴァルタヴルカンが
復活すると考えたのだろうか・・・。」
手に持った宝玉になんとなく言葉を掛た。すると、何が言い
たいのか気付いたらしく、
頭の中に話し掛けてきた。
「惑星エーアデ。エーアデの波動を感じていた。しかし、
ある日を境に周波に不定期な波を感じるようになった。それに
疑問を持ちずっと調べてはいたが、まさかそれが邪神
ヴァルタヴルカンの波動と同調していたのには気付かなかった。
気づいた時は遅く、既に大きな波動となっていた。そして近づく
『食』。恐らくこの『食』によって邪神ヴァルタヴルカンの闇の
力は最大限にまで広がるだろう。今回の『食』は丁度この
アトラテックをすっぽり包み込む大きさ。場合によっては
復活した闇が、未だ文明が行き渡っていない他の大陸までも
飲み込む大きさにまで広がるかもしれない。」
「・・・ちょ、ちょっ、ちょっと待ってくれ。影響があるのは
アトラテックだけで他の大陸に影響が無いわけじゃないのか?。」
「あくまでも最悪の場合の予想だ。ただ、ユーラントを始めと
する大陸神が押さえつけられれば何とかなるかも知れぬ。大陸神の
力を全て惑星エーアデに注ぎ込む。実際、それはやってのけられた。
未来人達の存在がそれを教えてくれた。ただ、かなりの犠牲は
あったようだがな。」「犠牲・・・?。どんな?。」
「それは自らの目で確かめるがいい。」
ティマイオスの宝玉はもう何の反応もしなかった。
アメダイーから預かった通信用の携帯端末機で連絡を取る。
「どうした?。何か分かったか?。」
出たのがI-KUB-AYA202上佐だったのでちょっと驚いた。
「・・・上佐は以前軍に居たWA‐W11VARーSYーUKAという人物を
御存知ですか?。」
「・・・WA‐W11VARーSYーUKA・・・、うーん、・・・あ、
もしかして何年か前に退役するって言ってた奴じゃないのか?。
やっと中級クラスの実地試験をトップで合格し、上級クラスに
行く直前で退役していった人物がそいつかもしれない。そう
言えば・・・お前と同期じゃなかったか?。」「ええ。」
「確か同い年の人物もまだ軍に居るようだから聞いておく。
だが、なんでそいつの事を。お前、親しくしてたのか?。」
勿論親しく等していないに決まっている。I-KUB-AYA202上佐。
信用できる相手ではあるが、重要な事はどんな人物にも
悟られてはいけない。だからそう質問される事を予想して
怪しまれないように言い訳は考えていた。
「・・・彼、とある『団体』に所属しているとかで、実は先日、
『説法会』というのに来ないかって誘われたんですよ。なんで
自分なのかなと思って、どういう人物だったのか聞こうと
思ったんです。」
「そうなのか・・・。まあ、いろいろ当たってみる。また後で
連絡する。」
WA‐W11VARーSYーUKAの事はI-KUB-AYA202上佐に任せるとして、
ユーリウスは今流れているニュースを確認しようとした。先程
読んだ宗教団体ナバホ=ダコタの「世界の終わりについて」の
項目を巡って様々な反響があったようだ。教団自体の活動を
疑問視し、批判的な意見が多い中、信憑性があるのかと思わせる
程の根拠に基づいた専門家の意見もあった。
宗教団体ナバホ=ダコタは今ナバホ=ダコタを信仰し、教祖
カレタカが作りだす『道』を辿る事によって、救いの道を
得られると書いてあるが、普通の人間にそんなことが可能なのか。
いや、そんな事が可能なら大陸神より凄い力を持った人間という
事になるが。
そういえば、例の未来人はこの惑星エーアデを巨大惑星の
衝突から回避できたのだろうか。もし、出来ていたとしたら
どんな力を使ったのか。またどんな人物だったのか。何千光年の
彼方からやってくる巨大惑星をどうやって回避したのだろうか。
『時空転送装置』・・・か。それで何か分かるかもしれない。
そう思いユーリウスはパソコンをシャットダウンし、宝玉に
向かって話しかけた。
「『時空転送装置』。それを使って例の未来人に会って話が
出来れば、と思って。」
「・・・無理だ・・・。」
頭の中に声が響く。「ティマイオス・・・?。」
「『時空転送装置』は動かす事は出来ない。」
「どういう事だ?。」
「『時空転送装置』はこちら側と、行こうとしている時代の
ゲートが開いていなければ無理だ。こちら側は常に開いている
状態であるが、今行こうとしている時代のゲートが開いて
いない状態では行く事ができない。無理に行こうとすれば
時空の歪みを彷徨ってしまう。」
「・・・そんな。どうしてもだめなのか?。」
「考えてもみるがいい。そんな事が可能ならば、この大陸は
滅びを迎えずに済んだかもしれない。だが、それはできな
かった。それが何よりの証拠。」
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