サント・マルスと混沌の邪神ーアトラテック編ー

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「・・・つまり、巨大惑星の回避が出来たのかどうかわからず じまいって事か。」 「そういう事だ。」 「・・・いいアイデアだと思ったのにな・・・。そうだ、もう一つ 聞くが、宗教団体ナバホ=ダコタの教祖カレタカは自ら『道』を 作ってこの大陸に住まう人を滅びから救うとか言っているが、 そんな事ただの人間に可能なのか?。それとも教祖カレタカは 人間じゃないのか?。」 「私もその人物について調べてみた。勿論ただの人間でそこまでの 力は無い。もしそれが本当だとしたら、大陸神より凄い力を持って いるという事になる。だが、残念ながらこの大陸が滅びから逃れ られない未来を考えるとやはりただの人間である事は否めない だろう。」「それもそうか。だよな。」  いきなり部屋のインターホンが鳴る。 「ロナウハイド様。王が御足路を願っております。至急執務室 までお願いいたします。」 「分かった。」 ユーリウスは執務室へ向かった。 「ロナウハイドです。」「入りたまえ。」 王の声を認識したドアが自動で開く。「何か。」 「出張命令だ。自衛軍第八駐屯地へ行ってくれ。今すぐ来て 欲しいそうだ。」 「分かりました。」 「オートメーションカーを使いたまえ。ステーション・コードは BA‐HNH‐OF=0‐08だ。」 「分かりました。行ってきます。」 「これで何か進展があるといいが。」「ええ。」 ユーリウスは城を出ると、近づいてきたオートメーションカーに 乗り、パネルを操作した。  オートメーションカーは幾つもの分岐を経てステーション BA‐HNH‐OF0‐08に到着した。バイクなら一時間以上掛かる 道のりをものの僅かな時間に短縮する。  新しく上書きした個人カードで中に入る。途中何箇所かある 個人認識装置に「RONAUHEIDO」とパスワードを打ち込む。指定 された通路はごく限られた者だけが通れる通路の為、誰かと 顔を合わせる事はない。故に誰に会うこともなく一気に 執務室へ辿り着いた。 「お呼びでしょうか。」 部屋に入ると、アルゴンキン長官とI-KUB-AYA202上佐が待って いた。 「元気そうで何よりだな。VAU-H・・・じゃなかった、ロナウ、 ハイドだったか。」 先に声を掛けたのはI-KUB-AYA202上佐だった。 「確か、WA‐W11VARーSYーUKAという人物の事だったな。退役して 五年以内なのでまだ情報は残っているが、ただ、なんせ個人 情報なので余り多くは情報提供はできない。」 「そうですか。」 「まあ、君が色々知りたがるという事は何かあるということ だと思ってな。君を信用して出来る限りの情報は提供する。」 長官はメモリをユーリウスに渡した。 「あと、それから・・・。」 上佐はどこかに携帯端末機を使って会話している。 「ああ、そうだ、今すぐ来てくれ。うん。」 と言とすぐに出て行った。  「ユー・・・えっと、ロナウハイド君。」「はい?。」 「最近世間を騒がせている『ナバホ=ダコタ』という宗教 団体を知っているかね。」 「ええ、ネットのニュースで観ました。かなり過激な宗教 活動を行っているとかで、問題視されている団体ですよね。」 「実は、そこの教祖カレタカの教えによると、この大陸は 間もなく滅ぶと言っている。二、三年後に起こる『日食』に よって邪悪な神が現れ、この大陸を食い尽くしてしまうと いう。どう思うかね。君は・・・。」 「宗教の事は分かりませんが、そう言った事が起こらな ければ良いと・・・。」 「そうだな。今までも日食位で大陸に影響があった事はない。 専門家もそう言っているからな。私が思うに『ナバホ=ダコタ』は 世間を騒がせたくてしょうがないのかもしれないな。」 長官の話を後ろめたい気持ちでじっと聞き入っていた。突然、 インターホンが鳴った。 「失礼します。」 入ってきたのは上佐とUPE-HE‐6G上尉だ。UPE-HE‐6G上尉は ユーリウスの顔を見た途端青ざめた表情をした。皆それに 気付かない訳はなかった。「どうした?。」 上佐はわざと尋ねる。 「い、いや・・・なんで、VAU-HE-1Dがここに・・・確か退役 したって・・・。」 「居ちゃ悪いか?。」「あ・・・いや・・・。」 「久し振りだな。」「あ・・・ああ、うん。」 UPE-HE‐6G上尉の歯切れの悪い答え方にユーリウスは疑惑が 確証に変わっていくのを感じた。I-KUB-AYA202上佐が話し 始める。 「実はお前をここに呼んだのは彼がとある人物について詳しい 者を探していたそうなんだ。お前、確か以前退役したWA‐ W11VARーSYーUKAという人物と幼馴染だったそうだな。それで彼に 色々教えてやって欲しいんだ。私達は、退役した軍人とはいえ、 個人の情報を特定の人物に公表する事は出来ない。お前が 知り合いなら話が早い。どういう人物か教えてやって くれないか。」 UPE-HE‐6G上尉は何か思う事があるのか暫く黙っている。 「どうした・・・?。彼とは随分仲良くやっていたと聞いて いるし、WA‐W11VARーSYーUKAとは幼馴染なんだろう。橋渡しを してやるのが親切じゃないのか?。」
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