1人が本棚に入れています
本棚に追加
「遂に来たな。R-01-VAU-HE-1D、ユーリウス・ヴォルフ
ガング。」
ワナギースカは床に座り込だ後ろ向きのまま、ノート
パソコンから目を離さずに話しかける。
「今その名はお前が名乗ってんじゃねえの。お陰で跳んだ
とばっちりだ。」
「その胸に手を当てて考えてみろ。それこそ自業自得じゃ
ないのか?。」「何!?。」
「R-01クラスに配属されていい気になっているようだが、
だからこんな目に逢うんじゃないか。」
「そうさせたのはお前の方だろう。」
「そうだ、だから天罰を与えてやった。ちやほやされて
いい気になっているお前に。」
ワナギースカはそれ以上の事は言わなかった。
「だから・・・何だ?。」
「俺はお前と同じように父親を失い、母だけが生活を支えて
いた。母を助ける為、学校を中退し、軍に入隊した。境遇は
お前と一緒だ。だが、母親は日雇いで僅かな賃金しかもらえな
かった。俺の下には弟と妹が二人いて家計はいつも火の車だった。
そいつらも食わしていかなければならない為、軍に入った。
そんなときにお前の身の上を知り、苦しいのは自分だけじゃない。
そう思えてきた。それを支えに俺は頑張って来た。ところが、
どういう訳かお前だけがR-01クラスに配属された。同じ境遇
だったはずのお前が・・・ライバルだと思っていたお前が
どうしてR-01になれたのか。世の中間違っている。不条理な
世の中なのか?。何でお前だけが優遇されるのか。」
「だからどうした。そんな事の為だけに俺を陥れようと
したのか。滑稽だな。」
「何だと!!。」
「確かに俺はR-01クラスに配属された。だが全て自分の実力だ。
優遇されているとか贔屓されているとか言われているが、全て
この実力があってこその結果だ。そんな事も分からず口先だけで
言うなんて、そっちが間違っているんじゃないいか?。実力が
あってこそ俺は皆の信頼を得てきた。」
「何だと!!。俺だって努力してきた。苦しい思いも何度も
してきた。それなのに!。」
「笑わせるな。俺は苦しいとかそんな生ぬるい事を経験して
きたわけではない。どん底から這い上がって来た。お前とは
覚悟の決め方が根本的に違うんだよ!!。自分の力量を棚に
上げて自業自得だなんてよく言えるよな。」
「覚悟だと・・・。そうさ何とでも言えばいい。今までだって
いつもそうだ。俺が必死に掴もうとして来たものはいつも手が
届きそうになるといつも消えてしまう。本来なら俺がR-01
クラスに配属されるはずだった。それが何故、俺より年下の
お前が、経験も価値観もまだ未熟なお前が俺を飛び越してR-01
クラスに配属されるんだ。おかしいじゃないか。実力とか何とか
言ってるが、本当にそうなのか怪しいものだ。」
「・・・ならば、今ここで勝負してみるか?。俺の実力が
どれだけのものか。そこまで言うなら余程自信はあるんだ
ろうな。」
ユーリウスは銃を突きつけた。「銃を取れ。持ってるんだろう。」
するとワナギースカは不気味な笑を浮かべる。
「この建物の中はかなり空洞が多くて、銃声などすぐに聞き
つけて警察とか集まってくるぞ。」
「自慢じゃねえが俺に使える武器は銃だけじゃない。残念だが
この銃はフェイクだ。お前の動きを一瞬だけ止める為の、な。」
「何!!。」
次の瞬間、ワナギースカは壁の方まで蹴り飛ばされた。
「・・・くそっ。」
「格闘技は得意でね・・・。」
ユーリウスは腰を少し落として構えた。
するとワナギースカは側に転がっていた鉄パイプを手にし、襲い
掛かってきた。
「おっと。」ユーリウスは上から振り下ろされたパイプを両手で
挟んで止めた。
「くそっ・・・離せ!!。」ワナギースカは何とか振り払った。
そして再び攻撃する。ユーリウスは余裕で交わしながら、側に
あった鉄パイプを構えて体制を整えた。
ワナギースカは鉄パイプでユーリウスのあちこちを攻撃するが、
ユーリウスはパイプをまるで剣でも扱うように攻撃を交わす。
「・・・そう言えば、剣術も得意分野だったな。」
「何だと!!。」そこに隙が出来た。いとも簡単に鉄パイプを
弾き飛ばすと、ワナギースカは今度はパイプ椅子を叩きつけてきた。
椅子の攻撃を鉄パイプで交わす。
「こんな重いもの良く振り回せるなあ。褒めてやるよ。」
「何だと・・・馬鹿にしてるのか!!。」「そういう事だ。」
「そんな口叩けなくしてやる!!。」
ワナギースカは椅子の重さの勢いで上から椅子を振り下ろした。
ユーリウスが交わしたので、椅子は大きな音を立てて床にぶつかった。
「ちょこまかと動きやがって・・・。」ワナギースカは横から
椅子を叩きつけた。
ユーリウスは鉄パイプを椅子に引っ掛け椅子を放り上げた。
椅子は大きな音を立てて落ちた。「さあ・・・どうする?。」
ワナギースカは腰を床に落としながら後ずさりする。ふと
偶然にもスーツケースに手が触れた。ユーリウスは左手に
鉄パイプ、右手に銃を構えている。
ワナギースカはユーリウスを睨みつけたままスーツケースを
開けた。「動くな!!。」
彼が構えていたのは一丁の改造銃。
「手を頭の後ろに回して、銃とパイプを捨てろ。」
「撃ったら、音が響くんじゃなかったのか?。」
「こいつは消音銃。ここで撃っても音は響かない。万事休す
だな。」
ユーリウスは言われたとおりに銃とパイプを彼の目の前に
放り投げた。
「そのままにしていろ。・・・動くなよ・・・。」
ワナギースカはユーリウスから目を離さず銃を取ろうと
した。しかし、銃に一瞬目がいった時彼の、銃を取ったはずの
手がナイフで大きく傷つけられている。痛みの余り、銃は音を
立てて落ちた。
「な・・・何を。」
最初のコメントを投稿しよう!