サント・マルスと混沌の邪神ーアトラテック編ー

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「言うのを忘れていたが、ナイフ投げも得意でね。あと投げ 縄と、ランス(槍)とアーチェリーと・・・後バズーカ ランチャーも照準を外した事はないし、他に何があったかな。」 「そ、そんなにか・・・。」 「R-01クラスに最年少最短で入るにはそれくらいは必用だろう。 当たり前だ。」 「くそっ・・・。」 「やっと俺が言った言葉の意味が分かったか。お前とは格が 違うんだよ。」 ワナギースカは言い返すことは出来なかった。 「ちっ・・・畜生・・・。」 「R-01-VAU-HE-1D-0ユーリス・ヴォルフガング。その名を持つ 人間はここまでの力量を持つ事のできる人間だけが名乗れる名。 お前みたいな三流がやすやすと名乗れる名前じゃない。」  暫く睨み合いが続いた。 「・・・これで勝ったと思うなよ・・・。本当の勝者は切り札は 最後まで取って置くもんだ。」 「何だと・・・。」 「この場所は既にネット上で予告していた場所の近くだ。国家 警察も爆弾の爆発を操作する場所を特定しようと近辺をくまなく 捜索しているはず。ここを見つけ警官隊が突入し手来るのはもう 時間の問題だ。俺はここから出る最短ルートを知っているから この建物から出るのにそう時間は掛からない。だが、お前は どうかな。この建物は何に使われたかは知らんが、かなり複雑な 造りになっている。俺は予めお前が来る事を予測して非常階段の 全てを外しておいた。つまり逃げ場は無い。警官が突入してきた 時点でお前が逃げ切れているとは到底思えない。そうなればこの 状況からいってこの爆破事件の犯人がやっぱりお前だったって 事にはなるだろう。」 「それはどうかな・・・?。」「何っ!!。」 「試してみるか?。」 「ずんぶんと自信がある言い方をするようだな。ハッタリでも かましているのか?。」 「・・・知っているか?。お城に居る神様は誰がいつ、どこに 隠れても人の行いを観ていて、正しい行いをした者にはご褒美を。 悪い行いをした者には神の裁きを与えるそうなんだ。ここで お前と俺とで一つ勝負をして、どっちが正しいか決めようじゃ ないか。お前が正しければ俺はお前から天罰とやらを受ける。 そして俺が正しければお前には俺から神の裁きを与えてやる。 どうだ。」 「お前が神の裁きだと!!。」「そうだ。」 「頭がイカれているんじゃないか?。」「お互い様だろう。」 ユーリウスがワナギースカに近づこうとした。その時煙幕と 催涙弾が投げ込まれた。流石のユーリウスも避けきれず、 まともに催涙弾を食らってしまった。 「・・・んなもん持ってやがったのか・・・。」 煙が消えると、そこにはもう誰も居ない。パソコンが一台 あるだけだ。「逃げられたか。」 「逃げられちゃったの?。」陰に隠れていたチヘンネが近づいて きた。 「ああ、けど、頼むよ。」「任せて。」「急いでくれよ。」 チヘンネはパソコンのデータの内容を急いでメモリにコピー する。下の階から何か音がする。どうやら警官隊が突入して きたらしい。ユーリウスは通信用の携帯端末機から メールを送った。 「ぎりぎり、何とか終わったわ。」「よし。オッケー。」 ユーリウスとチヘンネは光の帯に包まれた。  警官隊が突入した時には一台のパソコンが置いてあるだけで 誰も居なかった。仕方なくパソコンを証拠物件として押収したと ニュースで報道していた。  「お前も卑怯者だな。勝てると分かっている賭けを相手に 仕掛けるなんて。」 チリカワはユーリウスに向かって言った。 「何言ってるんだよ。向こうはテロリストだぜ。情状酌量の余地 なんて無いだろう。」 「それはそうだが・・・。」  三回目の爆発は何とか不発に終わったようだ。が、しかし未だ 捕まらないテロリストに国家警察も苛立ちを感じているようだ。  一方、真犯人であるワナギースカは、ユーリウスが警察が来る 前に逃げられたので当然の如く不機嫌だ。 「何故、逃げられたんだ?。万が一の事を考えてあちこちに トラップを仕掛けて置いたっていうのに・・・。まさか、これが 『神の裁き』なのか?。馬鹿な・・・。」  ワナギースカがそんな事を考えているとは露知らず、ユーリウスは 四箇所目の爆弾の設置場所の特定に余念が無い。場所は国家警察の 本庁になっている。 「この近くで遠隔操作が出来そうな場所は、と。」 「ユーリウス。何をするつもりだ?。」 「今度は奴の先回りをして、足止めを食らわせる。そこへ警察を 呼んで、奴はお縄を頂戴するって筋書きだ。」 「そう巧くいくのか?。」 「巧くいかせる。そうしないとこの事件いつまで経っても 解決しないだろ。この俺が本気を出したら怖いって事をその身に 叩き込んでやる。」  結局、四箇所目の爆破地点の遠隔操作が出来そうな場所の 特定は出来なかった。そもそも四箇所も爆破する予定だったの だろうか?。 いつの間にか眠ってしまったらしく、外の明るさで目が 覚めた時にはパソコンのキーボード部分を枕代わりにして いたのに気付いた。 「・・・あちゃー・・・壊れなかったかな。」 ふと見ると携帯端末機にメールの着信が入っている。 「・・・お、王か。」 ユーリウスは返信する代わりに直接電話を掛けた。 「・・・はあーい・・・。」 「おっ、やっと繋がったか!!。ロナウハイド君!!。 ニュースを観て見ろ!!。」 「はあ・・・?。」「大変な事が起きてるんだ。」 ユーリウスはネットのテレビニュースのサイトを開いた。 そこには連続爆破事件の容疑者としてユーリウスの名と 手配写真が映っていた。
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