サント・マルスと混沌の邪神ーアトラテック編ー

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「・・・な!!。何っ・・・?!!。」 その瞬間、一気に目が覚めた。 「この写真・・・提供したのは軍の奴らか・・・。俺 よっぽど嫌われてたのか?。」 写真の出所が軍でホームページを作った時の写真だとは すぐに気付いた。 「・・・待てよ。警察では遠隔操作の為のパソコンは押収 したはず。あれの中に何が入っているか確認しな かったな・・・。」 ユーリウスはその時のメモリを取り出し、パソコンに 読ませた。 「・・・爆破箇所の特定に気を取られて、こいつの存在を すっかり忘れていたな。」  「読み込み中」の表示が動いている。その時携帯 端末機から着信音が鳴った。 王からだ。「はい。」 「ニュースを見たか?。」「ええ。」 「どう思う?。警察は例のパソコンを押収したはずだが、 君を犯人と断定するものが入っていたという事か?。」 「それを今確認中です。」 「今から私もそちらに行く。」「えっ・・・いえ。」 全て言い終わらないうちに向こうは通信を遮断したようだ。 丁度読み込みが終わり、中のデータが表示された。その データには爆破箇所と遠隔操作の場所、そして何枚かの 画像データが入っていた。  間もなく王が到着した。「どうだね。」 「ええ、奴はこのパソコンを始めから警察に押収させる つもりでいたようです。ですから私が作ったように見せ かけたデータが入っていたようです。あと、私が軍に いた時の写真データなどを使って、犯人と断定させる材料を パソコンのデータとして入れていたようですね。」 「うーむ・・・。」 王は腕組みをして考えている。 「方法はまだ思いつかないが、こいつを巧く利用して真犯人を 捕まえる事は出来ないものかと・・・。」 「なる程・・・。」 その時、部屋の中央に光の束が現れた。 「ん?。ティマイオスか。どうした?。」 「人々が憂い始めている。例の宗教団体の教えに皆少しずつ 賛同しているようだ。事実は変えられないが、『道』とやらの 虚偽の教えをのさばらせてはならない。」 「・・・要するに、『出来もしない事を出来ると言って人々を 迷わせるな』って事か?。」 「その通りだ。」 「こいつは面白くなってきたな。奴が挑戦状を叩き付けるなら、 受けて立とうじゃないか。ユーリウス・ヴォルフガングの名を 騙り、犯罪者の濡れ衣を着せた事、絶対に後悔させてやる。」 「それも大事ではあるが・・・。」ティマイオスは不満そうに呟く。  「・・・いや、宗教団体の方もぶっ潰すが・・・。」  世間にユーリウスの顔写真が公開された。軍の上層部が幾ら 庇おうとしても、下の階級の隊員は、国家警察が公務執行権を 振りかざされると逆らえないのだろうか。結局上層部がどんなに 隠そうとしても情報は漏れてしまう。 「国家警察のトップって、確か天下りじゃなかったっけ・・・。」 テレビのニュースに向かって文句を言ってみる。軍がここまで 立場が弱いとは思わなかった。確かに、粉争とか内乱とか起これば 軍の仕事にはなるが、それ以外は災害救助などしか仕事が無い。 それに掛かる国家予算が税金で賄われ、その負担が庶民に圧し 掛かってくるとなると、庶民の不満はつのるばかりだろう。目に 見えている活躍が無いのに税金だけが掛かる。言ってみれば軍部は かなり肩身が狭い。その分国家警察が幅を利かせているのでは、と いった専門家の意見を聞いた事がある。  テレビからいきなりポーズ音が聞こえた。 「・・・臨時ニュース!?。」 「・・・今、警察庁から情報が入った模様です、どうやら 四箇所目の爆破予告が警察庁に送りつけられた様です。ただ今 現場から中継が繋がっているようです。」  ニュースキャスターの画像から中継の画像に切り替わった。 特派員がメモパッドの原稿を読み上げる。 「今日午前九時頃に送られてきた、ユーリウス・ヴォルフガング 容疑者からの犯行声明分によると、今度は警察庁の建物がある付近に 爆弾を仕掛けたといった内容である事が分かり、付近の住民の避難が 急がれています。また、この件につきましては先日押収された 容疑者のものと思われるパソコンからも犯人の割り出しに余念が無い 模様です。これ以上の被害を出さない為、一刻も早い犯人逮捕を 祈るばかりです。」 「警察庁か・・・待てよ・・・なんで警察庁なんだ?。」 一緒にテレビを観ていた王が話し掛けてくる。 「・・・警察庁か・・・何か関係あるのかね。」「いいえ、全く。」 「だとするとこれは一体どういう事だ?。」 ユーリウスにも全く心当たりが無い。だが、何か引っかかる。 「どうかしたかな。」 「今までの真犯人の行動パターンと自分の足跡を照らし合わせて みてるんです。まず最初に、食事をしたホテルのレストラン、次が 自宅、そして軍の駐屯地。だが何故今度は全く縁も無い場所 なのか?。」 「犯人が別人、という事は考えられないか?。」 「つまり便乗犯という事ですか?。」「多分な。」 ユーリウスは考えた。けど、ヒントになるものは思いつかない。 「何か引っかかるが・・・。」そう言って背伸びをした。 「引っかかるって、何がだ?。」 「分かりません・・・、ただなんとなく附に落ちなくて・・・。」 「うーん。・・・ところで、その真犯人、なんて名前だったかな。」 「ワナギースカ、だったかと。」 「その人物は君の事をどれくらい知っているのかね。」 「・・・いや、多分それ程の事は知らないかと。軍にいた時は、 顔は知っていたが、話もした事もなかったですから。だから私の 事を知っているっていっても、例の私の友人からの情報しかない はず。と言っても軍内では自分の事なんてそんなに 話さないですから。」「そうか・・・。」 二人は再び黙ってしまった。
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