第6話~ロデードの宿にて~

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 受付で鍵を受け取って、指定された部屋へと向かいながら俺は寝台は1人用のものが2つ置いてある部屋であってくれと願っていた。一緒の部屋で泊まることに同意しておいて今更な話かもしれないが、それならまだギリギリ問題ない範疇だと心の中で言い聞かせていた。  取れた部屋の入り口の前に立った俺、鍵を鍵穴に入れて右に回す。ガチャリと音が立ち、開錠されたことを俺に教える。手前側に引く片開きの扉を開いてまずはミリアを入れる。それに続いて俺が入り部屋を見渡した。  長さ2メラー、幅1メラーほどの通路の向こう側に寝台がある。俺の目に映っているのは明らかに1人用としては大きすぎるものだ。目に手を当てたくなる状態だ。いや、もしかしたらオーク用のベッドかもと意味の分からない想像をしながら通路を進むと内部がはっきりと見えた。寝台は1つだ。俺は膝から崩れ落ちた。 「どうしたんですか?」 「い、いや……」  ミリアは膝から崩れ落ちている俺に声を掛ける。俺が顔を上げて答えると彼女は前かがみになって膝に手をついた体勢を取っていた。彼女の服は胸元辺りが少し開いたもので、その体勢を取られると彼女の豊かな胸が強調されるばかりか彼女の谷間が深く深く見える。  自覚があるのか無いのか、彼女のニコニコとした笑顔からは全く分からない。  俺は立ち上がって部屋の左右を見回してみる。部屋自体は広い。おそらく値段的にも冒険者が数多く利用するからか武器や防具といった装備品を置けるように場所が広めにとられているようだ。寝台の左右両側に小物入れのような三段の引き出しが置かれている。  さすがに床で寝る訳にもいかないし、ベッドで寝る他ないらしい。 「き、着替えましょうか?」 「そ、そうだな。今着てるのは洗わないといけないし」  俺が寝台以外で寝れる場所がないかと部屋を見回していると、ミリアに服を着替えようと言われた。俺は彼女の言葉に頷いて、俺はあっちを向いてるからと言って彼女に背を向ける。  そして俺たちは服を着替えていく。俺はそこまで複雑な服を着ているわけではなかったので、すぐに着替える事ができた。だがミリアの方は少し時間が掛かっているようだ。後ろで女性が服を着替えていると思うと気が気ではない。 「着替え、終わりました」  ミリアの言葉を聞いてやっと彼女の方を向く。そして服の洗濯。リッチな冒険者なら人に頼むのかもしれないが、俺たちはそうもいかない。自分たちで洗濯して干す。  食事はギルドで奢ってもらった時に軽食を摂った。俺も結構飲んだのでお腹が結構膨れており今すぐ何かを食べたいということも無かった。  あとは特に何をするということも無く寝るだけだ。2人用の大きな寝台。俺はその右端に腰掛ける。ミリアの方は既に寝台に寝転がって敷布を被っている。 「ブレイドさん、寝ないんですか?」 「いや、寝るよ。寝る寝る」  俺はミリアに寝ないのかと尋ねられて、寝るよと返答して部屋を灯していたロウソクの炎を消していく。だが全ては消さない。全て消してしまうと急な尿意が来た時に移動がままならなくなってしまう。左右両側にあるランプ2つの光だけを残すとかなり暗くなった。  俺も寝台に寝転がって敷布を被る。なるべく彼女に近づかないように右端ギリギリ辺りで寝転がるが、それでも距離はかなり近い。 「おやすみなさい、ブレイドさん」 「ああ、おやすみ。ミリア」  ミリアにお休みの挨拶をされ、俺も返したが、女性と寝台を共にすることは初めてで、とてもいつも寝ている時の気分ではない。欲情とかそういうのではなくかなり緊張している。ある意味昨日寝ざるを得なかったあの橋の下よりも眠りづらい気がする。  挨拶をしてからはお互い何も話さない。暗い部屋で静寂の時間がただただ過ぎる。普段なら寝台に入っていれば眠気が来てもおかしくないくらいの時間だが、全く眠気が来てくれない。  ミリアはどうなんだろうか?そんな風に思っていると隣からスース―と寝息が聞こえてきた。どうやらミリアは眠れたらしい。俺は心の中で寝るの早いなと思わずツッコんだ。だが俺の方は相変わらずだ。 「すー……すー……んぅ?」  隣からは寝息と時折何か吐息のような物が聞こえてくる。その声が妙に色っぽく、余計眠りを妨げられている。余計に目が冴えてきたような気さえしてきた。  やっぱり眠れないじゃないか!眠れない……眠れない……。目を閉じながらそんなことを呪文のように唱え繰り返していたが、徐々に眠気が現れてきて、いつの間にか俺も意識が閉じていた。
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