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「…非常に不本意ながら、俺の魂の一部にエイトリアンの魂が宿った。…みたいだな」
打って変わって憮然とした面持ちで、ジョシュアが低くつぶやく。文字通り、まじまじと、いやホント、まじまじ見つめてしまった。
さっきと何にも変わらないのに、今は確かにジョシュアに見える。
ジョシュアの魂にエイトリアンが宿った。そんなことあるのか。
「なんだよ、もっと嬉しそうにしろよ。元々俺たちは魂の片割れだろ? 一心同体じゃん」
ジョシュアが、陽気に言い放つ割りに嫌そうに顔をしかめている。物凄く奇妙だ。まるでジョシュアが一人芝居しているみたいだ。
「俺はお前みたいに強引じゃない」
「…そうかあ? お前、結構ラズリ泣かせじゃん」
けどまあ、思い返せば、水底の宮殿でジェームズ王はエイトリアンに姿を借りていたし、側近獣人たちも何かに憑りつかれていたようだったし、…
あり得ないことでもないのか?
「…なあ。これで俺たちヤり放題だな」
絶妙におかしいジョシュアをガン見していたら、1人で言い合っていたジョシュアが俺に向き直って、顎の下をついっと撫でた。懐に入った猫にするように。
「おい。ラズに触るな」
「触ってんのはお前だろ」
「夜は絶対出てくんなよ」
「むしろそこしか俺の出番ない気がするけどな」
え。なんか。ジョシュア相手なのに。すげー身の危険を感じるんですけど?
「…金龍と銀龍の融合。奇跡じゃ。選ばれし龍とは、このことであったか。金龍銀龍双方の力を併せ持つ龍のことであったのか、…」
トーニ爺さんが恍惚とした表情で、感慨深げにジョシュアに見入っている。
魂の契りって、そういうことか⁇
「…帰ろうぜ、ラズリ。俺たちの国へ」
ジョシュアが銀獅子に姿を変えると、俺を背に乗せて吠え声をあげた。
「勝手に決めるな。こっちだろう」
俺を背に乗せたまま、ジョシュアが今度は天翔ける壮麗な銀角獣になる。
「死森のルートは俺に任せろって」
銀角獣がまた銀獅子に。
「ラズをのせて走るの危ないだろ。空から行く」
銀獅子がまた銀角獣に。
その度俺は背中から空中にポンポン跳ね飛ばされる。
「…ジョシュ、…エイ、…いえ、ジョシュア様?」
トーニ爺さんが困惑しきった顔でオロオロと声をかける。
「へ、…陛下?」
いつの間にやってきたのか、エイトリアンの従者ハヤブサ獣人たちも周りに揃う。
「…お前たち」
使い慣れた身体に関してはジョシュアに軍配が上がったのか、銀獅子から銀角獣に変わったところで形体が安定し、舌打ち混じりにジョシュアが従者を振り返った。…舌打ちはエイトリアンのものと思われる。
「無事だったか」
「あ、はい。ジョシュア様」「はい、頭っ、エイト様」
エイトリアンの従者の返答がハモった。
「…ん?」
「我らが王はジョシュア様だぞ」
「そのジョシュア様の中にエイト様がおられるのだ」
ハヤブサ獣人たちが騒がしい。お互いに言い合うというよりは、一人一人が己相手に言い合っているような、…
「…そうか、お前らも融合したのか」
ジョシュアは、…エイトの可能性が高いけど、瞬時に状況を理解したらしい。
「ジェームズ王の置き土産ってわけだ」
つまり。
ハヤブサ獣人たちの中に、ジョシュアの側近獣人の魂が宿ってるってことか。なんか物凄く賑やかなことになってんな。
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