13.銀の龍 瑠璃色の姫君を愛でる

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「…非常に不本意ながら、俺の魂の一部にエイトリアンの魂が宿った。…みたいだな」 打って変わって憮然とした面持ちで、ジョシュアが低くつぶやく。文字通り、まじまじと、いやホント、まじまじ見つめてしまった。 さっきと何にも変わらないのに、今は確かにジョシュアに見える。 ジョシュアの魂にエイトリアンが宿った。そんなことあるのか。 「なんだよ、もっと嬉しそうにしろよ。元々俺たちは魂の片割れだろ? 一心同体じゃん」 ジョシュアが、陽気に言い放つ割りに嫌そうに顔をしかめている。物凄く奇妙だ。まるでジョシュアが一人芝居しているみたいだ。 「俺はお前みたいに強引じゃない」 「…そうかあ? お前、結構ラズリ泣かせじゃん」 けどまあ、思い返せば、水底の宮殿でジェームズ王はエイトリアンに姿を借りていたし、側近獣人たちも何かに憑りつかれていたようだったし、… あり得ないことでもないのか? 「…なあ。これで俺たちヤり放題だな」 絶妙におかしいジョシュアをガン見していたら、1人で言い合っていたジョシュアが俺に向き直って、顎の下をついっと撫でた。懐に入った猫にするように。 「おい。ラズに触るな」 「触ってんのはお前だろ」 「夜は絶対出てくんなよ」 「むしろそこしか俺の出番ない気がするけどな」 え。なんか。ジョシュア相手なのに。すげー身の危険を感じるんですけど? 「…金龍と銀龍の融合。奇跡じゃ。選ばれし龍とは、このことであったか。金龍銀龍双方の力を併せ持つ龍のことであったのか、…」 トーニ爺さんが恍惚とした表情で、感慨深げにジョシュアに見入っている。 魂の契りって、そういうことか⁇ 「…帰ろうぜ、ラズリ。俺たちの国へ」 ジョシュアが銀獅子に姿を変えると、俺を背に乗せて吠え声をあげた。 「勝手に決めるな。こっちだろう」 俺を背に乗せたまま、ジョシュアが今度は天翔ける壮麗な銀角獣になる。 「死森のルートは俺に任せろって」 銀角獣がまた銀獅子に。 「ラズをのせて走るの危ないだろ。空から行く」 銀獅子がまた銀角獣に。 その度俺は背中から空中にポンポン跳ね飛ばされる。 「…ジョシュ、…エイ、…いえ、ジョシュア様?」 トーニ爺さんが困惑しきった顔でオロオロと声をかける。 「へ、…陛下?」 いつの間にやってきたのか、エイトリアンの従者ハヤブサ獣人たちも周りに揃う。 「…お前たち」 使い慣れた身体に関してはジョシュアに軍配が上がったのか、銀獅子から銀角獣に変わったところで形体が安定し、舌打ち混じりにジョシュアが従者を振り返った。…舌打ちはエイトリアンのものと思われる。 「無事だったか」 「あ、はい。ジョシュア様」「はい、頭っ、エイト様」 エイトリアンの従者の返答がハモった。 「…ん?」 「我らが王はジョシュア様だぞ」 「そのジョシュア様の中にエイト様がおられるのだ」 ハヤブサ獣人たちが騒がしい。お互いに言い合うというよりは、一人一人が己相手に言い合っているような、… 「…そうか、お前らも融合したのか」 ジョシュアは、…エイトの可能性が高いけど、瞬時に状況を理解したらしい。 「ジェームズ王の置き土産ってわけだ」 つまり。 ハヤブサ獣人たちの中に、ジョシュアの側近獣人の魂が宿ってるってことか。なんか物凄く賑やかなことになってんな。
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