おまけ番外編.③ローズベルト・ウィリアム・ディ・アンドレ・ジョシュアの葛藤

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おまけ番外編.③ローズベルト・ウィリアム・ディ・アンドレ・ジョシュアの葛藤

「ジョ、シュア、…ジョシュア、…っ」 俺の腕の中で艶やかに乱れ、潤んで震え、快感に喘ぐ。 最高に可愛くてたまらない気分にさせられる、そんなラズを。 誰にも見せたくないと思うのに、… 「満足そうな顔しやがって…」 俺の中には俺の分身がいて、俺が見るもの聞くもの触るもの、全て筒抜けだ。 「…見るなよ」 「だから見てんのはお前だって」 力尽きてまどろむラズの無防備に可愛い寝顔から目を離せずにいると、当然のようにエイトリアンが俺の視線を盗んで鼻で笑う。 全身を桃色に染めて無意識に俺を締め付け、甘く誘うラズを緩やかに揺らしながら、幸福の波間に漂っていると、エイトが勝手にラズに口づけた。 柔らかく潤んだ唇。従順に俺を受け入れ、絡まり合って溶けあう。 甘い。芳しい。癖になる。もっと欲しい。離したくない。落ちていく。ラズの中に。 ラズの中に俺がいて、俺の中にラズがいる。 何もかもがぴったりで、俺がこの世に生を受けたのは、きっとこの瞬間のためだったんだと思えるほど。何度抱いてもどんなに満たされても、もっと欲しくて足りなくて、いつもずっと永遠に繋がっていたい。 「…最高」 が。そう思っているのは俺だけじゃなく、俺の魂のもう半分が歓喜に震えている。 こいつを強制的に追い出したいのは山々だが、寸前のところで思い留まっている。なぜなら。 「…ラズリ。お前、めちゃくちゃエロいな」 「やだ、…ジョシュア」 エイトがいる方が感度が増すのだ。 ラズも。俺も。 いつもよりずっと早く蕩けて、泣きながら俺にしがみ付いてきたラズは言わずもがなだが、俺の方もエイトリアンの感じたことまで跳ね返ってくるのか、快感が強すぎて早急に引き上げられる。 俺とラズの交わりを見せてやるつもりなんて毛頭なかったが、ラズはエイトリアンに心を許している。 俺の双子の兄、ローズベルト・ウィリアム・ディ・アンドレ・エイトリアンは、俺の魂の片割れだから、当然、ラピスラズリに運命を感じているだろうし、交わって力を手に入れる権利も持っていた。ラズが選ぶのは俺でなくても良かった。たまたまあの時、この世界に現れたラズを俺が先に見つけただけで。ラズと結ばれるのは、エイトでも良かった。 だからなのか。 エイトリアンに煽られて、ラズが立て続けに弾ける。ラズの快感が大きすぎて、俺まで持っていかれる。ラズはエイトを拒めない。本気で嫌がっているわけじゃないことが分かってしまう。 「…ラズリ。足りない」 「…ん、ジョ、シュ、…」 寝ぼけまなこのラズをまたゆっくり高めていく。 風呂で散々泣かせて、力の抜け切ったラズをベッドに運んでからも止めてやれなかった。エイトがいるという恥じらいと背徳感に、ラズがいつも以上に俺を求めてくる。ずっと繋がっているのにずっと俺を離さない。多分もう体力的には限界なのにどこまでも素直に俺に応えてくるラズを、…悲しませたくはないし。 エイトがいなくなったら、間違いなくラズは悲しむ。 快感に弾けている瞬間もエイトが脳裏にちらついてくるけど、奴の言う通りラズを抱いているのはあくまで俺だし。ラズが呼ぶのもあくまで俺だし。もはやエイトリアンは俺自身だし。 「…あ、ジョシュア、…っ」 ラズがキスをせがんで、俺を欲しがる。それに応えてやりながら、愛しさが溢れる。 「ジョシュア、…好きだ」 「俺もだよ、ラズ」 この気持ちは多分俺だけのものではない。 「大好き、…」 だから。 限界を超えて快感に弾けて俺にしがみ付いたまま再び眠りに落ちたラズに、 「…スキスキうるせえんだよ」 優しく口づけるエイトリアンを、俺は未だ、追い出せずにいる。 俺たちはもともと二人で一人。 俺もラズと一緒で、この傲慢で迷惑な寂しがりを、…嫌いじゃない。
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