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「…つまり、お前。これは嫌がらなかったってことか?」
エイトリアンの心情に思いを馳せていたら、ジョシュアの声音が微妙に変わって、ふいに後ろからきつく首筋に吸い付かれた。
「や、…っ⁉」
不意打ちなのに、即座に甘い快感が身体中を駆け抜ける。思わず甘ったるい女みたいな声を上げてしまった自分を呪う。のに、止められない。これって何だ、とか、考える余裕がない。状況を顧みる余裕が全くない。
ジョシュアに触られるのを心待ちにしていたみたいに、身体中の細胞が騒ぎだす。もっと。もっと。ジョシュアが欲しい。
「…エイトとキスしてたな」
してたか?
首筋を這うジョシュアの甘い舌先に、思考が溶ける。じりじりと甘い期待が這い登る。今すぐ。ジョシュアにめちゃくちゃに溶かされたい。
なのに。なんで。
押し当てられただけで動かない背中の温もりも、回された腕も、つないだ手も、全然届かない。ゆっくりなぞるだけの舌がもどかしくて焦れる。指も舌ももっと深くもっと奥まで全部欲しい。
「ジョシュア、…っ」
なんで俺だけこんなに焦がれてるんだ。なんで俺だけこんなにすぐに切羽詰まってるんだよ。悔しいし恥ずかしいし情けないけど。
振り向いてねだって抱き着こうとしたら、長い腕に前向きに戻された。
「ホントにお前は俺を妬かせるのが上手いな」
そこから、後ろから散々焦らされた。
ゆっくりゆっくり辿るだけの舌に身体の奥が熱く疼いて狂いそうになる。回された腕と足は穏やかに伝わる体温しかくれない。
「なぁ、…おい、…っ」
「エイトの森で消えたって聞いて、俺がどんな思いでいたか分かるか」
柔らかい舌の感触の後、痺れるような甘い痛みを仄かに感じて目まいがした。ジョシュアの牙。俺を奥深くまで貫く。恍惚の刃。最初に俺にとめどない快感を与えたのは銀龍の美しい牙だったことを思い出して、身体中の血が沸いた。
「エイトを殺してやりたいとも思ったが、…」
ジョシュアの滑らかな指が緩やかに俺の身体を撫でる。堪らなくて声が漏れた。全ての意識が指先と舌がくれる甘美な刺激に集中する。
「お前が泣きそうだったからやめた」
泣かせてんのはお前だろ。もういい加減、早くくれよ。
ジョシュアの低い声が素肌にかかって、それだけで芯がわなないて震えが止まらない。お前だって俺の妹と結婚披露パーティー開いたりして、俺がどんな思いしたと思ってんだ。などと、恨み言を言う余裕は一ミリもない。
「…ジョシュア、…もう」
ジョシュアが欲しくて、耐えられなくて、振り仰いでねだった。
「俺が欲しいか」
ジョシュアの美しい地球色の瞳が真っすぐに俺を射る。俺だけを映して艶やかに煌めく。その麗しい虹色の彼方には俺だけが浮かんでいた。
「…ほしい」
懇願とともに首を何度も縦に振ると、焦らされて焦がれて募り募った欲望が弾けて涙が零れ落ちた。
「俺もお前が欲しい」
わずかに瞳を煙らせて、ジョシュアが俺をほんの一突きで快感の海に叩き落とした。
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