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どうやら。
俺と交わったことでジョシュアは完全に体力を回復したらしい。
艶々の煌めき。眩しい。眩し過ぎる。
血まみれで青白く瀕死状態だったのが信じられないほど、髪の先から足のつま先まで完璧に潤ってしなやかに力強い。元々、半端なく美しく整っているけど、もはや神の領域で、完璧すぎて目がくらむ。
このために俺を性急に求めたのかと思うとなんかムカつかなくもないが、俺の方は求めた以上の遥かに深い満足を与えられたわけだから何も言えない。
「お前を離すのは名残惜しいが、…」
ジョシュアの腕の中でほとんど夢うつつを彷徨っている俺に小さくキスして、
「復興に向かう」
ジョシュアは銀色に輝く広大な翼を広げた。
威厳高く雄々しい神秘のドラゴン。俺の愛しい銀龍に姿を変えると、
《落ちるなよ》
俺を銀色の鱗が美しく煌めく背中に乗せた。龍の姿が一番強いが一番体力を使うらしい。
俺はまだ夢見心地で、言ってみれば未だ奥にジョシュアを感じている状態で、すっかり脱力していて、落ちるなと言われてもしがみつくのも一苦労なわけだが、ジョシュアはちゃんと鱗を立てて俺を支え、艶やかで滑らかな鱗を枕みたいにして俺を休ませながら運んでくれた。
時々込み上げる快感の名残に震えながら、どこか懐かしい銀色の鱗に頬を擦り寄せていると、銀龍が小さく笑って、くすぐったそうに背中が揺れる。
《初めての時も、お前そうしてたな》
初めての、…
俺がこの世界に来て、訳も分からずまつ毛刑で捨てられた時、銀龍が俺を見つけてくれた。まあ、こいつは何のためらいもなく俺を貫いて初めてを奪ったわけだけど、…
《お前がいれば怖いものはない》
あの時も、銀龍は俺を乗せて飛んだんだよな。
銀龍は高いところが苦手だったらしいけど、…もう、怖くないのかな。
銀色に輝く滑らかな鱗を撫でる。
会社帰りに柊羽を背負って、仕事と保育園の荷物を抱えて帰った日々を思い出した。寝不足で疲労困ぱいで何一つ上手には出来なかったけれど、背中の柊羽が温かくて、それだけで幸せだった。会社でこき使われて柊羽と向き合う時間もままならなくて疲れ切って大変だったけど、俺の冴えない人生の中では一番充実した時間だった。
あの柊羽が、こんなに大きく強くたくましくなって、俺を迎えに来てくれた。柊羽に会えてよかった。柊羽を育てられて良かった。
なんだか深い感慨が込み上げて、愛しさが溢れて、銀の鱗に口づけたら、銀龍がまたくすぐったそうに小さく笑った。
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