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いつも通り昇が食事を終え、自宅に戻ってから1時間程経った。
真っ白い通路に美咲がカツカツとヒールの音を響かせ昇の部屋へと向かっている。
私達は少し離れた場所からそれを見ていた。
足音のリズムがパタっと止まった。美咲は通路の床をまじまじと見ている。
「雲流、気づいたみたいだね、足跡」
「その様ですね、成功です」
私はその先の部屋の主が女性だとわかる様、昇が踏んでしまったかの様に片方の靴底に口紅を塗っておいた。
足跡に気づいた美咲はゆっくりと昇の部屋の前を通り過ぎ何歩か進んだ、そして今度は勢いよく振り返り通路を戻り昇の部屋のドアホンをけたたましく鳴らしている。
私達は昇の玄関の前に移動し二人の様子を見ていた。
扉が開くと、何時もの様に両手を広げ微笑む昇が見えた。その時、美咲は昇を見る事なく玄関にしゃがみ靴を手に取った。空を切った昇の手は閉じて来たドアで押さえられ辛うじて倒れずに済んだが、靴の底を上に向け確認をした美咲は怒りを押さえ切れない目で下から昇を睨みつけていた。
「雲流、怖いんだけど…」
「何を言ってるんですか、ご自分が作ったシナリオですよ」
「そうだけど…ヤバくない?」
「とにかく見届けましょう」
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