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「無事です。覗いて見ますか?」
優しく問いかけてくれた天女様に向かって、鼻先まで落ちたメガネを慌てて指で上げながら目配せをしている文先生。
私はその様子にちょっと不安を抱きながら
「見る事、出来るんですか?」
と恐る恐る天女様に聞いてみた。
「あっ、は、はい、みみ見れますが…」
さっきまで落ち着き優しく語りかけてくれていた天女様が急に言葉につまりながら文先生をチラチラ見て答えてくれた。
「見せて下さい」
昇は愛する彼女を失い失意の淵に立ち、仕事にも行かずに塞ぎ込んでいるに違いないと思っていた。
「こちらです」
事務的に冷めた言い方で、文先生がフワッと現れた大きなスクリーンに手のひらを差し出した。
「えっ?えぇ~っ!」
そこに映し出されていたのは、私の同期でライバルの美咲と昇。私が連れていって貰った事もないハイクラスのホテルの最上階にあるバー、肩を寄せ合い語り合っていた。昇の席の左側にはカードキー…。
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