お宝?

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お宝?

卓真さんは ホコリにまみれた電気を土間に運んでくれた  「これって分解できる?」お姉ちゃんにきかれた卓真さんは 「傘と電気の部分を取り外すくらいの分別でゴミに出せるんじゃない?」と お姉ちゃんにとって見当はずれの回答をした 「ふーん ありがとう」とお姉ちゃんはちょっとスッキリしない返事をしたが 分別してもらったあと 傘と電気を眺めた 「なんもなさそうかなぁ」ちょっと残念そうなお姉ちゃん 私ももう一度傘を手にとって眺めてみた 「?」 すると 今まで 気がつかなかったが傘の縁の窪みに 紙のようなものが折り畳んで挟まっている まさか?ホントにへそくり? 「お姉ちゃん ここ」私は少し興奮ぎみに お姉ちゃんに窪みを指差して見せた 「なに?」お姉ちゃんもわたしの指差した先を覗き込む 「え? まじで?!」 お姉ちゃんも興奮している 2人で顔をみあわせ頷きあって お姉ちゃんが傘の隙間から その紙を引っ張りだす 長細く幾重にも折り畳まれたそれは 冷静にかんがえたら 大金が入るようなサイズではないのに 私もお姉ちゃんもワクワクした 掃除のお駄賃とか思ってしまった が お姉ちゃんが開いたそれは破れた茶封筒だった 「中に何か入ってるよ」私がいうより早くお姉ちゃんが中身を取り出す 「写真?」 折り畳まれていたので線が入ってあまり鮮明ではないが どうも軍服の男の人の写真だ 「おじいちゃんかなぁ」正直わたしもお姉ちゃんも おじいちゃんの若いときの写真は見た記憶がない  「どうかなぁ?」お姉ちゃんが何気なくひっくり返した写真の裏に文字が見えた 「あっなんか書いてあるよ!」お姉ちゃんもその文字を目を細めて見る 『だうせとどかぬ おもひなら ともにゆきたしそらのうえ』達筆過ぎて読みづらい字をなんとかたどる たぶんこれはおばあちゃんの字だ 生前よく 「うちは裕福だったから 私は女学校で字を習えたんだよ」と言って私達の名前をよく書いてくれた 幼かった私達には“きたない字”に見えて よく 「おばあちゃん 間違えてるよ」とかいいながら“正しい”あいうえお を教えてあげていた おばあちゃんはそれを 「あら そうなの?」といっていつも微笑みながら 私達の様子を嬉しそうに眺めていた
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