おばあちゃんの秘密

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おばあちゃんの秘密

「この文章からしたらさ この人って‥」 「おじいちゃんではなさそうだよね?」 私達姉妹は思わず見つめあって もう一度写真を見る 「こら2人とも 卓真さん働かせて何サボってるの!」 突然お母さんの喝がとぶ わたしもお姉ちゃんもビクッとしてしまう 「お昼ご馳走しようと思って様子見に来たのに 卓真さんしか働いてないじゃない」と呆れたように言ったあと 「あら 何これ?」土間のあがりはなに置いてしまった写真をお母さんが拾い上げ もれなく後ろの文字も読む 「“どうせとどかぬ思い…”」そして 「ねぇ あなたぁ!」と外に向かって声をかける するとすぐにお父さんが現れて 「どうした?ネズミでもいたか?」と聞いてきた 「ちがうの これ見て」とお母さんがお父さんに写真を渡す お父さんも同じように目を細めて両面を見たあと 「あの話ほんとだったんだな」とお母さんをみた あの話? わたしがはてなを頭に浮かべるとすぐ 「あの話って何?」とお姉ちゃんが両親に尋ねた 私と違ってお姉ちゃんは行動が早い 考える前に動いてる感じだ 「昔ね おばあちゃんよく縁側で空見てたのよ」いつの間にか卓真さんも土間にきてあがりはなに腰掛けている 「“いいお天気ね”って話しかけたらね」 お母さんは懐かしむように話してくれた のはこんな話だった 「おばあちゃんいいお天気ね わたしも一緒にお茶にしようかな?」というと 「そうだね」というので2人で縁側に座ってお茶にする 「お空の上には戦争でなくなった人もたくさんいるのかしらねぇ?」 おばあちゃんは唐突に言った 少し痴呆の始まっていたおばあちゃんにお母さんは優しく 「そうね 」と言った 「また こんなに穏やかな日が来るなら あの戦争はなんだったのかねぇ」 「そうね」 「夢ならよかったねぇ」 ふとおばあちゃんを見ると 泣きそうな でも穏やかな顔で 空を見上げている 不思議に思う まるで誰か特定の人を思っているようなその面持ち でも おじいちゃんはとは終戦してから結婚したし 身内でも戦死したという話はおばあちゃんはしたことがない うちの先祖は戦火を生き抜いたという話はおじいちゃんから聞いていた まぁでも戦争は想像できないほどの思いをおばあちゃんに残したのかもしれない 少しジョウダンめかして聞いてみる 「あら おばあちゃん 思い人でもいるのかしら?」 すると おばあちゃんは驚いたことに若い娘のように恥じらうようなかわいい表情をしたという
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