おばあちゃんの秘密

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「わたしねこう見えてモテたのよ」と言いながらふふ とわらった なんとかわいらしんだろうとお母さんも女子高生に戻ったような気持ちになり おばあちゃんの打ち明け話に聞き入った 「毎朝 家の前を掃いているとね 通る方がいてね 毎朝挨拶をするの でもそれ以上声も掛けられなくてね でも夏の日にわたし打ち水をしてたらその方にかかってしまって それであわてて手ぬぐいで拭いて差し上げたの 思わず触ってしまった背中の大きさ わたしね その方を好きになってしまったの 」そこですこしお茶をすする 「それがきっかけで あの方から挨拶以外にも少し話しかけてくださるようになって どんどん親しくさせていただいたのよ たぶん お互いに思いあえていたのよ でもね やっぱり戦争は無情よね 彼も戦地へ」そこでおばあちゃんはひとつため息をついた お母さんもなんだか切なくなってしまった でもおばあちゃんの話は続く 「しかも終戦間近でね 運がいいのか悪いのか 特攻隊に配属されてね お国のための最高名誉よね でもわたし喜べなくてね」おばあちゃんの目からは一筋涙がながれていた 「どうすることもできないまま 特攻すると言われた日も 彼が散ってしまった日もどんより曇った空をただ眺めて泣きながら ばんざいをしたのよ 今考えたらバカみたいよね」と静かに 涙をながし続けるおばあちゃんを お母さんも静かに見つめ続けた 「まぁ そのあとおばあちゃんのお父さんがお見合い相手を連れてきてまだ 彼を忘れられないまま あなたたちのおじいちゃんと結婚したんだって」なんか複雑 「昔は親は絶対だったからね」そりゃわかるけど… 「でもおじいちゃんは ほんとに優しくて 彼を思ったまま結婚したことを申し訳なく思ったわ っておばあちゃん言ってたのよ」 とお母さんは付け足した 「俺は じいさんとばあさんがあんなに仲良かったのに そんな元カレ?みたいなのほんとにいたのかよ?とおもってたんだよ」とお父さんはほんとに信じられないと言うように言った 「確かにね おじいちゃんとおばあちゃん すごい仲良かったもんね」 とお姉ちゃんに言われて  「確かに よく2人で旅行行ったり 美味しいもの食べる時は必ず2人で半分こしてたしね」といろいろ思い出した おばあちゃんはおじいちゃんの仏壇にも半分こしてたなぁ 「まぁ彼には申し訳ないけど おじいちゃんとおばあちゃんが出会えたお陰でわたしたちが いるんだしね」お姉ちゃんの前向きが発動して 家族に笑顔が戻る 「じゃ これはおばあちゃんの小箪笥にお引っ越しだね」とお姉ちゃんが“彼”の写真を2階にもっていった 「あぁあ へそくりなかったなぁ」 お姉ちゃんの大きな呟きが家の中にこだまする 縁側に出て空を見上げる  いいお天気だ この家にはたぶんまだまだいっぱい 知らない思い出がつまっているんだろう お掃除はまだまだ終わらなそうだ            おわり
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