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大学入学と共に入居して、かれこれ10年になる。
ギリギリになってバタバタと部屋探しをしたので、あと半日早ければ。とか、あと2ヶ月待てれば新築物件が。などと不動産屋に言われ、段々探し疲れて何処でもいいような気になったことを思い出す。
田舎から出て来て最初に思ったのは、狭さと陽当たりの悪さ。
無論、移動が始まる前とか、金を出すとかキャンパスより遠い郊外から通うとかすれば、物件は様々あるのだろうが、このギュッとした空間で一人、4年間暮らして行くのだろうか。と思うと妙に心細く、何処を見ても、なかなか決められなかった。
最後に、不動産屋が余りお勧めではないのか、申し訳なさそうに紹介してくれたのが、学生専用ではないが近々空く予定で、広いが古くキッチンパストイレ共用。元は会社の研修宿泊所に使われていたという物件だった。
今でこそ、シェアハウスとか洒落た物件もあるだろうが、10年前に共用というのは、母も俺も余り気は進まなかったが、一応見に行くことにした。
入り組んだ路地の奥に、新しいアパートに挟まれるようにして建っていた。
共用部分しか見学出来なかったが、トイレ、風呂場のドアには掃除当番表、綺麗に使用しましょうと貼紙がしてあった。
その真上のがらんとした広い和室を想像して即決の俺に、母はしつこいくらいに、本当にいいの?と尋ね、暫く新幹線通学でもいいのよ。などと言った。
あれから10年だ…。
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