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「キ~! なんてざまよ! あっちメチャクチャ強いじゃんか、センサーで相手の動きを探知できないの!」
「まさかステレス機能と特殊迷彩を完備してるとは予想外でした」
そう、見えないでは、パワーが上でも捕らえようがない。
特殊迷彩は周囲の景色とテロリストが同化してしまう。まるでカメレオンのようなもので、透明人間のように肉眼ではわからなくなってしまう。
まるで某アニメでおなじみの世界的な泥棒を相手にしているようなものだった。
「くっそぉ~! まて~い! テロリスト!」
景子は地団太を踏んで悔しがった。
その姿は某アニメに登場するインターポールの警部そのものの姿だ。
それを尻目にテロリストは窓を蹴り破りながら、悠々と撤退していく。
「さらばだ! とっつぁん!」
このとき、ゴンタロウは老人の姿になっていたので、そう犯人はからかったのだろう。
「だれが、とっつぁんだ! この野郎!」
迷わず、景子は時間を巻き戻した。
そして恵介に、とんでもない計画を提案したのだ。
まず会食する場所を郊外のペンションにしてほしい。
そして、火を放ってからテロリストと戦うというのだ。
「それでテロリストはパワードスーツを脱がずにはいられないと思うの! 題して風と太陽作戦よ!」
ゲル状のパワードスーツは熱しにくいものの、温まれば、ちょうど湯の中に入っているようなもので、四十度ほどパワードスーツ内部の温度がアップするだけで、中の人間はのぼせてしまう。
対する景子も蒸し風呂になるものの、四十度ならどうってことはない。
「密度の差よ、ゲル状の物体に身体を密着させるタイプのパワードスーツは操縦者に直接、熱が伝達されるはずだわ、まるで熱めの温泉につかっているようなもんよ、こっちはクーラーを装備してるから、少々、気温が上がろうがへっちゃらだわ! テロリストを『ぎゃふん!』と、言わせてやる!」
「うーむ、なるほどなぁ、しかし相手はステレス装備だぞ、これはどう攻略する?」と、恵介が問うと、景子は「へーき! へーき! 熱が上がれば、ゴンタロウたちの赤外線センサーで見つけることが可能だわ、特殊迷彩なんて意味ないよ!」
で、採用され、景子は勝利した。
罠と知らず、スピードモードで襲ってきたテロリストはペンションに火が放たれると、しばらく景子たちと戦っていたが、あまりの暑さに猛スピードでパワードスーツを脱いだ。
「あち! あち! あち! 死んじまう! 降参だ! 降参だぁ!」
なんせ四方から火炎放射器の炎を浴びて、ゲル状のパワードスーツが四十三度のお湯になったんだからたまらない。いきなり江戸っ子の爺さんが好む温泉に飛び込んだようなものだ。激しい運動をすれば、どんな格闘の達人でも湯だってしまう。
もうテロリストはフラフラだ。
こうして強敵は病院に担ぎ込まれた。
さて、この話には続きがある。
首尾よく報酬を恵介からもらった景子は、帰り道でゴンタロウに説教をされた。
「また委員長に知恵を借りたんでしょう。事件に知人を巻き込むことになりかねません」
「もう、うっさいなぁ、だから用心して二度も時間を巻き戻してるんだよ、バレないって」
景子は用心して委員長の小夜子から知恵を借りると、時間を巻き戻してから恵介に作戦を提案している。
つまり、時間が巻き戻っているので小夜子が作戦を伝授したという事実さえ、消し飛んでしまうのだ。
巻き戻された小夜子はゲル状のパワードスーツが実在している事実さえ知らない。
だが相手は小夜子、またどんなきっかけでバレないとも限らない。それを心配したゴンタロウが「お命大事にございます」と、忠告したが、景子は「わかってる、わかってるって」と、聞き流し、お札でパンパンになった財布をスカートのポケットの中で、にぎにぎしていた。
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