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門を抜けその地へ足を踏み入れるとそこは広場となっていた。あたりを見渡してみるがこれといって目を引くようなものはない。よくあるように人がいて建物がある、そんなただ広いだけの場所だ。しいて目立つものを挙げるとすればこの門の近くに剣と天秤を持った女性の銅像だろうか。しかし、それも興味を引くほどのものではない。姿形は違えど銅像なんてものは色々な場所にあるものだ。
ひとまず体を休めることが出来る宿を見つけるとしよう。長く滞在する理由は見つからなさそうだけど、次の目的地を決めるまでの間はここのお世話にならなくちゃいけないし。案内所を見つけるのも面倒だし、とりあえず端の方にあるベンチ座ってるおじいさんにでも訪ねてみるか。
「あの、すみません、少しお伺いしてもいいですか」
おじいさんはこちらに気づき顔を向けてくれた。
「いいですよ。どうかされましたか」
物腰の柔らかそうな人だ。
「僕は他の国から来たものなんですがこの国は今日が初めてよく知らなくて、それで宿屋を探しているんですけどどこにあるか教えてもらえますか」
「おお、旅人さんでしたか、それは遠路はるばるご苦労様です」
会釈をしておく。労われるのは嬉しいものだ。
「宿屋でしたか、何か希望されるものはありますか」
「といいますと」首をかしげ聞き返した。
「ここから近い方がいいとか、料理が出てくる方が良いとか何か旅人さんが求める条件のことです」
なるほど条件か。そんなことまで気にかけてくれるとは相当に親切なおじいさんだ。
「そうですね、ではあまりお金がかからないところを教えてもらえますか」
「それでしたら、ここを真っ直ぐ進んで左手側の曲がり角から三つ手前のところがありますよ」
おじいさんが指をさして教えてくれた方向を向き、場所を確認する。
「わかりますかな」
「はい、大丈夫です」
僕はおじいさんの方へ向き直り頭を下げた。
「丁寧にありがとうございました」
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