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「ただいま」
「お帰り、智にい」
家に帰ると当たり前のようにまひるが迎えてくれた。そんなまひるをいつものように扱ってリビングに向かう。リビングに着くと裕真とまゆちゃんが仲良く話していた。
「まゆちゃんいらっしゃい」
「あ、お邪魔してます。お兄さん」
まゆちゃんは裕真にはもったいないほどの可愛い女の子だ。気が早いけど、いつか結婚して義理の妹になってくれたら良いなと密かに願っている。
「だから、その呼び方やめろよ兄貴」
「良いじゃん。私は好きだな。まゆちゃんって呼び方、可愛いし」
どうやらまゆちゃんはこの呼び方を気に入ってくれているみたいで嬉しそうにはにかんだ。
「あ、今度お世話になります」
「今度。ああ、泊まりに来るんだったね。もし裕真が嫌なことをしたらひっぱたいて良いからね。それが出来なかったら俺を呼んで」
まゆちゃんに微笑みながらそう言った。すると裕真がだから、なんもしないってと言ってくる。
「わかってるよ。俺の可愛くて自慢の弟がそんなことしないって事ぐらい。ただ、一応な」
俺はそう言うと冷蔵庫から買ってあった弁当を取り出しレンジで温めた。温めた弁当を食べながら仲よさそうに話す裕真とまゆちゃんを眺める。二人を見ているとついつい自分が裕真の父親になったかのような気分になってしまう。
そんなことを考えながら食べているといつの間にか弁当は空になっていてまゆちゃんにゆっくりしていってね。裕真、まゆちゃんが帰るときは駅まででも送ってやれよと言ってまひるに送ると言ってまひると外に出た。
「ねえねえ智にい、今度の日曜日はお休み?」
いつものようにまひるが俺の腕に抱きつきまひるの家までの道を歩いているとそう聞かれる。
「ああ、ぬいぐるみか。日曜日、休みだから良いよ、行こう」
俺がそう答えるとまひるの顔は明るくなりデート嬉しいなと言った。そんなまひるにプレゼント買いに行くだけだろと言って微笑んでみせる。
「智にいにとってはそれだけでもまひるにとってはデートなんだもん」
「そうか。じゃ、まひるにとっては俺はデートの練習相手ってとこかな。いつか俺じゃなくて他にデートしてもらえる良い人を見つけろよ」
まひるにそう言うとまひるは小さな声で智にいの意地悪と言った。俺はその言葉をあえて聞こえないふりをした。
「じゃ、早く寝ろよ」
「…智にいの馬鹿」
まひるはそういうと家の中に入っていった。そんなまひるを見送ってから自分の家に帰った。
「ただいま」
「兄貴お帰り」
リビングに顔を出すと二人はまだいてテレビを見ていた。そんな二人に軽く話をして風呂場に向かった。
脱衣所で服を脱ぎ、体や頭を洗ってから湯船につかる。裕真とまゆちゃんを見ていると恋愛って良いもんだなと思う。だけどすぐに裕真も今年は受験で大学や専門に行くならお金がかかる。だから自分が恋愛にうつつを抜かす時間なんてないと考え直した。
「…もっと頑張らないと」
湯船の中に潜り、すぐにあがりそう呟いて風呂を出る。水を飲みたくて台所に行くとリビングにいたはずの二人はもういなくなっていてまゆちゃんはもう帰ったのかと思った。水道の蛇口をひねり水をコップに入れてそれを一気に飲み干す。
ふとリビングの時計を確認すると針は二十二時を指していた。コップを流しに置き眠ろうと部屋のベッドに横になって目を閉じる。
ー続くー
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