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読みたかった雑誌を立ち読みし、買いたかった漫画を買って本屋を出たところで操と出くわした。 かなり息を切らしていて久遠を探し回ったようだ。 超能力者同士だと感じるものがある。
久遠からもそれを感じることはできたはずだが、接近に気付かなかったのはおそらく油断していたためだ。 もう来ないと思っていた。 久しぶりの自由な放課後の魅力に精神が緩んだのだ。
―――・・・何故こうなった?
―――俺は別に馬鹿を助けたくはないぞ。
―――だから行かなかったんだ。
―――お前もアイツと二人でいたら分かっただろ?
―――一緒にいたら自分に馬鹿が移るって。
―――俺の苦労も分かってくれ。
―――それなのにわざわざ迎えに来るとか、そりゃあ露骨に嫌な顔はするだろう。
周りを見渡した。 男二人、腕を捕まれ引っ張られるような感じで移動すれば衆目を集めるのは当然だ。 だが危険な感じがないためか、見るだけに留めている。
―――腕を掴まれたまま移動なんて変な目で見られているじゃないか。
―――目立つのは嫌なんだが。
操が突然振り向いた。
「素直に付いてくるじゃないか。 だったら最初から素直に従えばいいものを」
「・・・」
そりゃあ引っ張られれば付いていかざるを得ない。 逃げるかどうか迷ったが、ここで逃げてしまえばまた追ってくるだろう。 正直自宅まで来られると迷惑極まりない。
―――参ったな。
―――このまま本当に勝負するとなったらどうしよう。
―――穏便に済ませる方法は何かないだろうか?
考えているうちに裏山へ到着した。 強ノ助は何もない小屋を楽しそうに見上げている。
―――一体何が面白いと言うんだ?
―――パッと見何もないが。
「おー! 久遠じゃないか。 待ってたぞー」
よく見ると強ノ助の両手は後ろで縛られていた。
―――その状態でよく一人で大人しく待っていたな。
「久遠! 今から俺死ぬことになるんだってよ!」
「あぁ、その通りだ。 早くコイツを助けたければ――――」
『おい、馬鹿。 その縄、自分で解けるだろ』
「ん? あぁ。 つか、俺は馬鹿じゃねぇからッ!」
そう言って縄を簡単に引き千切った。 操は当然驚く。
「はぁ!? いやいやいや、ちょっと待て! キツく縛っていたはずなのにどうしてだ!?」
無理もないのかもしれない。 縄は人の手で千切るには困難な太さだったからだ。
―――ふん。
―――まだコイツは馬鹿が怪力だと知らないようだな。
―――・・・ん?
―――操の奴、急に黙り込んでどうしたんだ?
何となく嫌な予感がした。 何が起こるか分からないが、超能力者と相対した時に感じる奇妙な感覚。 それが強まった気がしたのだ。
―――・・・もしかして。
『おい、馬鹿! 頭上に注意しろ!』
「あ? 上?」
強ノ助が上を見上げると小屋を突き抜けてレンガが降ってきた。
「おぉッ!?」
それを強ノ助は軽々とキャッチした。
―――うわ、レンガとかコイツ、マジか。
―――本当に殺しにきているな。
―――馬鹿でなかったらキャッチをミスって気を失っていたぞ。
久遠と強ノ助の位置が逆なら危なかった。 避けることはできたかもしれないがキャッチは無理だ。
「え、は、どうして・・・。 それは偽物のレンガではないんだぞ!? 重たいはずなのに!」
そこで操はハッとした。
「ッ、も、もしかしてお前・・・! 超能力者なのか?」
「ん?」
「重力を操れる超能力者なのか!?」
―――・・・は?
もちろん久遠は、強ノ助が超能力者だとは全く認識していなかった。
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