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戦時中、使用人を動員させる貴族が多かった中、彼は使用人を守ることを貫いたと聞く。つまりヴェブレン財として使用人を有するわけじゃないことを意味し得る。聞いた通りの勇敢で明晰な人だ。
「……それで、お話とは?」
クラウスは鼻を啜り、眼鏡を机上に。
「あぁその前に。調子はどうかな? と聞くのも難儀か」
「おかげさまで、こうして暮らすことが出来てます。お気遣い要りません」
「改まらなくてもいいさ。君の家には世話になったわけだし、私に出来ることはこのぐらいしかない。等価交換をしたまでの話。そうだろ?」
「いえ。恩恵を常に受ける身ですから、永遠に等価になることは無いでしょう」
「あはは。なるほど君の父によく似ているな、思い出す……ところで、クリスタとはどうかな?」
その言葉に多少の焦りを覚えた俺は、不自然に視線を下げた。
「……ど、どうとは?」
「クリスタの部屋で紅茶を楽しんでいるんだろう?」
バレている、なんてことだ……。
「……すみません、勝手な真似を」
するとクラウスは手を前に出し「いいや違う。そういう意味じゃない」と苦笑。
「……ど、いうことでしょう」
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