[1]

15/18
前へ
/18ページ
次へ
「……自分を恐れていると言われました。一か月ほど経った時の事です。そこで……いや今も、教わっている気がしてなりません。恐れ逃げ恐怖に支配されるだけの自分を肯定すべきでないと。  果敢に生きる姿に教わることは多く、聡明さに感服します」  クラウスは、緩やかに息を吐いて背をもたれる。 「君の顔は、とても見ていられない程のものだった。だから、そういう顔を見せてくれると、あぁ良かったなと思う。クリスタもしかりだ。  それから話は変わるが、明日から二日間は遠方に行かねばならない。その間もクリスタを頼んだよ」 「お役に立てることがあれば全力で」  クラウスは笑みで、俺に信頼を示してきた。まだ俺は人でいて良いのだろうか。生を全うするために……。  翌日クラウスは出立し、来賓の無い落ち着いた一日が始まった。  と言ってもやることはいっぱいだ。ハウスメイドも皆それぞれの役目がある。俺もまた、この広い屋敷の一部を除き、ほとんどの場所を綺麗にしなければならない。そして束の間、クリスタの部屋で紅茶を嗜む。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加