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 だが彼女には当てはまらない。部屋はいっつも汚い。服は脱ぎ散らかして、おやつは床に落ちて、読んだ本はベッドを囲むように散乱している。そのせいで俺は、クリスタの部屋を掃除するよう主から言い渡された。 「早く行こうよーもう終わりでしょ。そこはもう綺麗になってるわ。これ以上やったら窓が消えちゃう」  消えるわけがないだろ。俺は雑巾使いであって、魔法使いになった覚えはない。共通点は箒ぐらいだ。  言葉を交わすことなく作業を終えた俺は、クリスタに引っ張られて部屋の前へ。彼女は振りむきざまに「いいー驚かないでね?」と、意味深な表情。いったいどれだけ汚したんだ?  これから覗く部屋を貴婦人が見たら卒倒して泡でも吹くか、悲鳴を上げて警察を呼ぶだろう。しかし……ドアを開けて見えたのは、整理整頓の手本のような部屋だった。  呆ける俺からバケツを奪い隅に置くと、もったいぶる歩き方で後ろに手を組み戻ってくる。絵に描いたような、したり顔だ。 「ねぇどう? 塵一つないわ。見様見真似で掃除のコツ盗んじゃった。凄いでしょっ、ふふふ」  この前、掃除中に部屋から出ていかなかった理由はこれか。
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