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「だから二時間はやることないでしょ。その代わりにお話ししましょ。はい座って!」
肩を押さえ俺を着席させると、向かいの椅子へ身軽に腰掛けた。
青いレースが高貴さを醸す机上には、ティーセレモニーのフルセット。ぬいぐるみになった気分だ。と言ってもクリスタは子供だが、ぬいぐるみでママゴトするような歳でもないか。
「ねぇ見てこれリンゴのジャム! 私が作ったのよ。好きそうな顔してるからあげる」
立派に色づく小瓶を手渡された。
リンゴジャムが好きそうな顔か、俺も見てみたいな。このあと紅茶の水面を見てみよう。きっと冴えない顔が映るはずだ。
クリスタはバラの花があしらわれたティーカップに、白い宝石のようなクルンチェをコロンと入れ、ポッドから湯気の立つ紅茶を注ぎ入れた。パチパチと音が立ち始める。これはクルンチェが溶ける時に出る音だ。なぜ、これを……。
「驚いたでしょ? フリースラントの人って父から聞いたの。安心して、生クリームもあるから」
小さなスプーンで、生クリームをカップの中へ入れると白薔薇が咲き始めた。五感を生かして味わうフリースラント流の嗜みだ。
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