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 クリスタは「さ、どうぞっ」と微笑を添えてカップを俺の前に。なぜこんなことを、と疑問の目を向けたつもりだったが、クリスタはそう受け取っていないらしい。 「ふふっ気にしないで。遠慮しないでいいから、ね?」  ローブ調ドレスのクリスタとティーセレモニーとは、まるで中世にタイムスリップだ。俺は刻一刻と変化する白い雲を口元に寄せる。紅茶の香りを楽しむのは、いつぶりだろう……懐かしい。忘れていた何かが、香りと共に胸に入り込んできた。  そんな俺を横目に、クリスタはケーキスタンドからクッキーを皿に。 「ねぇどう、紅茶は美味しい?」  カップの中で移ろう模様を見つめたまま頷いた。 「ふふ、良かったわ。  どうしてヒューイは喋ろうとしないの? 父とは話すでしょ。なんで私はダメなの?」  黒パンより味気ないであろう俺によく飽きもせず……もしかして、ここに入る使用人が受ける洗礼か?  ふぅんと悩まし気にため息をついたクリスタは紅茶を一口。俺がどうやったら口を開くか模索しているようだ。 「あっそうだ! じゃ私の秘密教えてあげる。そしたら喋ってくれる?」
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