[1]

7/18
前へ
/18ページ
次へ
「いや、そういうわけじゃ……」 「ふぅーん。なら喋らないのは私のため? それとも私が嫌いだから?」  嫌われるのはむしろ俺の方なはずだが、面白いことを言うもんだ。 「俺は……君の会話相手になれるような人じゃないんだ。分かってくれ」 「いいえ分かりません! だってそれは私が決めることでしょ? 勝手に決めないで。だからこれからは喋ること!」  そう言って身を乗り出し「わかったー?」と、俺の顔を覗き込んでくる。 「わかった……」 「やっと素直になったぁ。意地張ってばかりじゃ、溶けないクルンチェになっちゃうわ。ところでヒューイはいくつなの?」  溶けないクルンチェか……音を出さずに寂しいもんだ。 「あぁ二十、と……六つくらい、だったか」 「へぇーもう少し上かと思ったのに意外ね」  俺も意外だ。戦場に出ていたせいで正確に分からない。 「ヒューイは、なんでこの仕事をしてるの?」 「他にやることがない。できることも」  するとクリスタは、クスッと口に指を添える。 「何かおかしかったか……?」 「おかしいわ。だって、みんな仕事の誇りを語り始めるもの」  思わず俺の視線は落ちた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加