21人が本棚に入れています
本棚に追加
「いや、そういうわけじゃ……」
「ふぅーん。なら喋らないのは私のため? それとも私が嫌いだから?」
嫌われるのはむしろ俺の方なはずだが、面白いことを言うもんだ。
「俺は……君の会話相手になれるような人じゃないんだ。分かってくれ」
「いいえ分かりません! だってそれは私が決めることでしょ? 勝手に決めないで。だからこれからは喋ること!」
そう言って身を乗り出し「わかったー?」と、俺の顔を覗き込んでくる。
「わかった……」
「やっと素直になったぁ。意地張ってばかりじゃ、溶けないクルンチェになっちゃうわ。ところでヒューイはいくつなの?」
溶けないクルンチェか……音を出さずに寂しいもんだ。
「あぁ二十、と……六つくらい、だったか」
「へぇーもう少し上かと思ったのに意外ね」
俺も意外だ。戦場に出ていたせいで正確に分からない。
「ヒューイは、なんでこの仕事をしてるの?」
「他にやることがない。できることも」
するとクリスタは、クスッと口に指を添える。
「何かおかしかったか……?」
「おかしいわ。だって、みんな仕事の誇りを語り始めるもの」
思わず俺の視線は落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!