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「やめとくよ。笑いなんて似合わない」
「なら似合うようにすればいいでしょ? 私が手伝ってあげるから!
ねぇ……ここに来る前に何かあった?」
クッキーを撫でるように触れ「話す程のもんじゃない……」と呟く。クリスタは俺がクッキーを口へ運ぶのを待ち「そう……」と落ち着いた声色で。
そして何かを悟った仕草を見せていたかと思うと、両手に顎を乗せて俺を見つめてきた。春の花をめでる様な目で。
「なにか……変か?」
「ふふっ、別にぃー」
「……なぜ嬉しそうなんだ?」
「ヒューイがいるからよ」
「……そうか」
「ねぇ……怯えているの?」
俺の喉が鳴った。別に菓子を飲み込んだからじゃない。心が見透かされた様に感じたからだ。
「……どういう意味だ?」
「あなたは自分に怯えてる」
「自分に……?」
「そう。私は人と違うでしょ? 怪物のような自分に怯える私に、あなたはそっくり……写し鏡みたいって思ったの」
無邪気さのベールを脱いだ顔からは、一人の聡明な女性が窺えた。
「……自分が、怖いか?」
「ふふ、怖いわね。だって寿命も短いかもしれないし、もっと目が悪くなっていくかもしれない。
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