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地球へ帰る事になった。アストロと真美は同じ便に乗る。
「どうしたの、楽しそうね?」
「メールが来た、良いニュースだった」
真美の問いに、アストロは答えた。
「ぼくを襲ったやつが死んだ。警官に射殺されたそうだ」
「射殺・・・」
人が死んだ、普通は悪いニュースのはず。
でも、アストロには良いニュースである。無理して、大人のふりはしない。善人の仮面をかぶるのは止めた。
あの西口彰は保釈されていた。
保護観察の名目で、また街中で暮らしていた。
そして、またしても事件を起こした。ナイフで女性を襲い、大ケガをさせた。
駆けつけた警官は警告して銃を向けた。
なおも、西口彰は警官に襲いかかろうとした。
警官は西口の足を撃つ。なおも、西口はナイフを振るおうとする。
警官は西口の肩を撃った。それで、ようやくナイフが手から落ちた。
病院に運ばれた時、すでに西口の息は無かった。
当該の警官は、以前にも西口の逮捕にかかわっていた。顔を見知っていた。
「住宅地に迷い込んだクマを駆除したのと同じさ。裁判を受ける資質の無い者は、犯罪の現場で射殺。それが最善だ。やる時はやるもんだ、警察も捨てたもんじゃない」
もう、襲われる心配は無い。アストロは笑みで座席に着いた。
真美は首を傾げるが、それ以上は考えないようにした。所詮、自分の問題ではない。
地球に帰ったら、麻生真美は決断しなくてはならない。月に住むか、否か。考えるほど、胃が重くなる気がした。
「当機は地球、日本の砂川スペースタワー行きです。座席に着いたら、酸素マスクと吐しゃ物吸引マスクを点検して下さい。動かないようなら、客室乗務員へお知らせ下さい」
機内アナウンスがあった。
札幌は捨てるほど悪い街じゃない、アストロは見直していた。
シートベルトを締め、目を閉じた。また地球の空気を吸える、しばしの夢を見よう。
何億年も未来の夢は必要無い。ほんの数年先の未来の夢が望みだ。
< おわり >
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