第22話 side 和奏

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「今日はねえ、美味しそうなピーマンがあったからね、青椒肉絲(チンジャオロース)! 夏野菜が来たねえ。残念ながら筍は水煮だけど」 「わあ、美味しそう!」 トマトとキュウリのサラダに、茹でたオクラを丸ごと冷えたお出汁につけた、芳川くんが好きそうなシンプルなもの。今日もあのお店まで買いに行ってくれたのだろうか。 「だろ?」 と、芳川くんは上機嫌だ。 「帰ってすぐにご飯食べられる幸せ!」 「うん、いつも今泉がそうしてくれてるから」 「……芳川くんといたら太りそう」 「そうなんだよ。俺も引っ越して通勤が同じマンションになってから運動不足になりそう」 「じゃあ、今度は私の家にする?」 「お、いいね。茄子もあったから麻婆茄子か悩んだんだよなぁ。次は麻婆茄子にしよ」 「あはは、痩せる気しないね」 「食べたら、運動!」 の、言い方が意味深で、なんというか、なんというか。 「今日は泊まって行かないよ」 と、言ってしまった。 「ええ」 と、ブーイングを受けたけれど、OLの朝は早いのだ。 「そういえば、柴田さんはもう職場にも来てないの?」 「うん。そうだな」 「結構あっさりしてるんだね」 同窓会の時と、この螺旋階段で会った時を思い出す限り……しつこそう……に、見えたのだけど。
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