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クラス全体が馴染んできた頃には、愛理と真代が岩田くんと仲良くなってきて、休み時間にはなんとなく、岩田くんのグループと近くにいた。そこに木村くんと、芳川くんもいたのだ。
芳川くんはそんなに喋るタイプではないものの、距離感が近くなると愛理も真代も芳川くんにきゃあきゃあ言わなくなった。
そういう恋というよりファンに近い心情になるには、適度な距離が必要なのだろう。単純に芳川くんはその対象から外れ、リアルな男の子になったんだと思う。
近くでも見ても、芳川くんは普通に格好いいし、「和奏はどう?」って聞かれても「格好いいよね」とは答えていた。だって、そこはかわりなく格好いいし。
──その日も、そんな感じで愛理と真代と喋っていた。
その近くで、岩田くんと木村くんも喋っていて、芳川くんは私から一番離れた位置でマンガを読みながら、岩田くんが話し掛けるのに相づちを打っていた。
突然、芳川くんがパッと顔を上げた。その正面にいた私と、バチッと音が鳴るほど目が合った。
……あれ、何?
岩田くん、木村くん、愛理、真代、全員が私の顔を見ていて、なぜ見ているのかはわからなかったけれど、見られていることに恥ずかしくなってきて、顔が熱くなるのがわかった。すぐに両手で顔を覆い
「……どうしたの」って、横の真代に聞くと
「ほら」と、芳川くんに視線を移した。
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