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何だろう。私も芳川くんへ視線を合わせると、ばつが悪そうにしている。
「葵、こういうのは男から言わなきゃだろ」
岩田くんが、バシンと芳川くんの背中を叩いた。
芳川くんは、ふっと脱力するように息を吐いた。
「今泉さん、今日、一緒に帰れる?」
「え、うん、帰れるけど……」
何で?
「いやあ、こんな近くでカップル誕生するとは思わなかったな」
ガハハと笑った岩田くんにポカンとしてしまう。
「良かったね、芳川くんも和奏のこと、好きなんだって」
愛理がそう耳打ちしてきた。
も!?いや、私、芳川くんのこと、別に好きじゃないけど……
そう言おうと思って芳川くんの方を見ると、恥ずかしそうにそっぽを向いた。
あ……。今、ここで言ったら芳川くんに恥をかかせてしまう。後で、後で話そう。
ぐいぐいと背中を押され、芳川くんの隣に座らされる。
「もう、付き合っちゃえよ、わざわざ後で言わなくてもさ」
木村くんまで……。
「後で」
ぼそり、芳川くんが言った。
どうやら、私が格好いいと常日頃言ってるのを愛理と真代が岩田くんに話してしまったらしい。それを、岩田くんが芳川くんに話し、芳川くんが私を好きだったから、くっつけちゃおうと、そうなったらしい。
どうしよう、そんなんじゃなかったのに。チラリ芳川くんを近距離で見上げると、彼も視線を返してくれたけど、すぐに恥ずかしそうに片手で私の視界を遮った。
そして、
「見ないで」って、小さな声で言った。
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