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僕は時間を見つけては、ルースの所へ行った。一体いつからあの場所へ?食事はとっているようだが誰が彼女をあんな洞窟へ閉じ込めているのだろう。しかも不思議なことにルースには悲観した様子が見られない。心がどこかにいってしまったかのように、彼女からは何の感情も読み取れない。
「君はこんなとこに閉じ込められて辛くないの?」
僕は家からかっぱらってきたいちじくのパンとチーズを小さな隙間からルースに渡しながら聞いた。こんな場所にいるのに彼女の目は深い湖の底の澄んだ水のように透き通っている。何の不満もない全てに満足しているように彼女は微笑んで言った。
「つらい?なぜ?」
彼女はとても不思議そうな顔をして僕を見つめた。
「え、だって こんなとこに居たら何処へも行けないし何も好きなことができないだろう?誰とも話すこともできない」
思いがけない反応に僕は驚いてしまった。
彼女は遠くを見るような目をして何も答えない。僕は続けて言った。
「君が、ルースがここから出たいなら僕はどんなことでもする。誰かに無理やり閉じ込められているんだろう?でも最近そいつがここに来たような痕跡はない。逃げ出すならチャンスなんだ。行く所がないなら僕の家に来てもいいし、この街を出てどこか遠くに2人で行ってもいいんだ」
僕はルースが好きになっていた。会う度に不思議な魅力の彼女に惹かれていった。
「ありがとう。でも私はここが好きなの。こんなに心が落ち着くところはどこにもないの。あなたなら分かるでしょう?」
僕は納得がいかなかった。きっと誰かが彼女をひどく脅しているに違いない。僕がそいつから必ず彼女を解放してやる。
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