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家に戻ると、母親が慌ただしく出かける準備をしていた。僕は、台所をそっと横切ろうとしたが見つかってしまった。
「ああ、ちょうど良いとこに帰ってきた。ちょっと今から街外れのハイバーさんの家まで一緒に行ってほしいんだよ」
僕はルースに持って行く食べ物をこっそり拝借していることがバレたのかと思ったので安心したが、面倒くさそうな用事を頼まれてしまってげんなりした。これからルースを助け出す計画をたてようと思っていたのに・・・
しぶしぶ了承して母親とハイバーさんの家に馬車で向かった。
「何かあったの?」
僕は尋ねた。大体、僕はその人を知らない。
「ハイバーさんのお宅は、娘さんと2人暮らしをしていたんだけど、少し前にお母さんが病気で亡くなってね・・・気の毒に。娘さんも学校にも行っていなくて家の中に閉じこもっていたものだから、近所の人は心配していたんだけど、ある日突然いなくなっちゃったんだよ。もうずっと家に帰ってないみたいでね。少し家の中を見て手がかりを探して欲しいってお隣のマレさんに言われてね」
話をしている間に、どうやら着いたらしい。家は外から見てもひっそりとして庭は荒れ果てていて、今は誰も住んでいないことが一目で分かった。
母親はためらいなく家の中へ入る。僕は続けて入った。部屋の中はがらんとしていて埃っぽく、クモの巣があちこちにはっている。
何も手がかりなんてなさそうだ。僕はふと暖炉の上の戸棚にある写真を見た瞬間、目を疑った。
ルース!少し幼いけど、間違いなくルースだった。この家の娘なんて僕は全然知らなかった。
「母さん・・・この子・・・」
「ああ、娘さんだよ。昔から白くて可愛い子だったね。でも、母親から虐待されていたんじゃないかって、マレさんが心配してたんだ・・・」
僕は母親の話を全部聞く前に、ハイバー家を飛び出してルースのもとへ走った。
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